2016 年 49 巻 11 号 p. 1141-1149
患者は78歳の女性で,黄疸・肝機能異常にて入院し,精査の結果,下部胆管癌および副乳頭部癌の診断で2009年1月膵頭十二指腸切除術を行った.摘出標本では副膵管領域に囊胞の集簇を認め,病理組織学的検査にてリンパ節転移を伴う下部胆管癌と副膵管領域の拡張した膵管を伴う膵癌の同時性重複癌と診断した.術後補助化学療法施行中に局所再発を疑って化学療法を継続施行したが,腹水・肝性昏睡のためQOLが低下し,化学療法を中止した.その後再発巣の増大や他部位への転移を認めず,2013年12月に肝硬変にて死亡した.術後約5年の長期生存のため,免疫染色検査も加えて病理学的に再検討したところ,膵癌に関しては膵管内乳頭粘液性腺癌であることが判明した.副膵管領域に膵管内乳頭粘液性腫瘍が発生することは少なく,また自験例では肝外胆管癌も同時性に合併しており,非常にまれな症例であると思われたので報告する.