日本消化器外科学会雑誌
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編集後記
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山口 茂樹
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2016 年 49 巻 12 号 p. en12-

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先週,中国の広州に行く機会があった.上海,北京に次ぐ中国第3の都市であり,研究会場のホテルから見える川向こうのビル群はまるでニューヨークのマンハッタンを見ているかのような景色であった.中国では地域の研究会がほぼ毎週末各地で行われ,ライブサージェリーも盛んに行われているそうである.病床数1万以上の病院で年間1,000件を超える大腸癌をひたすら手術している病院がいくつもあると聞く.

外科医にとって手術は治療の中心であり,常にその鍛錬が必要なことは言うまでもない.多くの症例を執刀することはスキルをあげるために有効であるが,手術の成功のためには病変の正確な術前診断,全身状態の評価,術後合併症の的確な管理のうえ,長期成績の評価も必須である.幸い日本には過去の膨大なデータの蓄積やその検討結果があり,その経験から現在の多くの術式が選択されている.また,希少な症例についても多数の報告がなされている.自身の実臨床でもこうした報告を参考に方針決定することもあり,それこそが臨床系雑誌の大きな存在意義である.目の前の患者のためにどの治療を選択するか,その根拠についても自信をもって説明し,その予後まで推察する.学術集会はそれを議論する場で,学術雑誌はそれをまとまった形でいつでも閲覧できるものであり,頼りにされるものである.本雑誌もその一端を担っていくために,明日の診療のためになる投稿を期待する.

中国では国民性や経済的理由から術後患者が再来受診しないことも多いという.幸い日本では多くの患者が外来通院し,予後の検討まで含めた質の高い報告がなされている.本号には原著論文1編のほか,選りすぐりの症例報告が10編並んでいる.ぜひご一読いただき診療にお役立ていただきたい.

 

(山口 茂樹)

2016年12月1日

 

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