日本消化器外科学会雑誌
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特別報告
National Clinical Database(消化器外科領域)Annual Report 2015
掛地 吉弘宇田川 晴司海野 倫明遠藤 格國崎 主税武冨 紹信丹黒 章正木 忠彦丸橋 繁吉田 和弘渡邉 聡明後藤 満一今野 弘之高橋 新宮田 裕章瀬戸 泰之一般社団法人National Clinical Database
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2017 年 50 巻 2 号 p. 166-176

詳細

1.Annual report作成の背景

2011年から症例登録がはじまった「一般社団法人National Clinical Database(NCD)」のデータベース事業は,現場の外科医・関係者の協力により,2015年までの5年間で700万件を超える手術症例が集積され,世界に類を見ない,素晴らしい巨大データベースが構築されつつある.このデータベースは,各種専門医システムにおける診療実績を証明するインフラとしてだけではなく,データ分析を通じて医療の質を向上させ,適正な医療水準を維持することも目的としている.

日本消化器外科学会データベース委員会では主な事業として,NCDデータを利用した消化器外科領域新規研究課題の審査・採択および進捗管理のみならず,臨床現場へのフィードバックとしてRisk Calculator,施設診療科の患者背景とパフォーマンスの全国比較などのリリース,臨床データ調査(Audit)の実施などを行ってきた.そして,2011年と2012年に入力された主要データを報告したAnnual Report 2011–20121),2013年に入力された主要データを追加したAnnual Report 20142)に続き,今回は2014年に施行され登録された50万件を越える消化器外科手術情報を追加しAnnual Report 2015を作成した.本報告が本邦の消化器外科医療の質向上への一助となれば幸いである.

2.これまでの概要

医療水準評価術式として定めた,食道切除再建術,胃切除術(幽門側),胃全摘術,結腸右半結腸切除術,低位前方切除術,膵頭十二指腸切除術,肝切除術,急性汎発性腹膜炎手術の8術式の2011年概要に関しては論文化3)~10)された.これらの論文に基づきNCD Feedback機能を適宜リリースし,2015年9月には8術式のリアルタイムフィードバック,Risk Calculator(手術を受ける患者さんの術後30日死亡予測発生率,手術関連死亡予測発生率を計算する),施設診療科の患者背景とパフォーマンスの全国比較,パフォーマンス指標および合併症発生率の閲覧が活用可能となっている11).さらに2011,2012両年のデータを用いて,医療水準評価対象8術式に関する合併症に対するリスクモデルについて論文化を進めている.これまでに汎発性腹膜炎と幽門側胃切除術の論文が掲載されている12)13)

また,NCD臨床データ調査(Audit)のテストケースとして,2016年2月から3月に「テストAudit」を行った.判定基準や判定方法を定め,次回以降のAuditに向けシステムの確立を計画している.今後引き続き,より詳細なデータの公表により本邦の消化器外科医療の現況を周知していく予定である.

3.対象と方法

今回対象としたのは,NCDに登録された症例データのうち,一般社団法人日本消化器外科学会が消化器外科専門医認定審査のための消化器外科専門医修練カリキュラムに定めた手術(新手術難易度区分)に関するデータである.115の消化器外科専門医術式および医療水準評価術式として定めた8術式の2011年から2014年までのデータを対象とした.手術症例数,性別,年齢区分,死亡率,施設区分(認定施設,関連施設,その他),麻酔科医の関与,消化器外科専門医の関与について経年的変化を比較検討した.

4.データ解釈における注意点

今回の報告においては,データの解釈上,以下の点での留意が必要である.

(1)NCDでは1症例に対して最大8術式までの登録が可能となっているため,「5.消化器外科専門医115術式に関する調査」における手術件数の合計が実際の手術症例数の合計とはならない.

(2)患者年齢,性別,術後30日状態の登録に不備のある症例は除外した.

(3)同時に複数の術式が施行された症例も全て術式ごとに集計した.

(4)術後30日死亡は,入院中,退院後にかかわらず術後30日以内の全ての死亡を含み,手術関連死亡は,術後30日死亡と術後90日以内の在院死亡を合わせたものである.

5.消化器外科専門医115術式に関する結果

2011年1月1日から2014年12月31日までの4年間にNCDに登録された消化器外科専門医115術式の総数は2,056,325例で,臓器別にみると食道33,728例(1.6%),胃・十二指腸293,429例(14.3%),小腸・結腸741,487例(36.1%),直腸・肛門192,199例(9.3%),肝101,976例(5.0%),胆486,040例(23.6%),膵62,720例(3.1%),脾16,532例(0.8%),その他128,214例(6.2%)であった(表1).男女比は全体で約6:4であり,年齢区分でみると全体の16.0%が80歳以上であるが,特に胃・十二指腸,小腸・結腸,直腸・肛門では80歳以上の比率が高かった(表1).

表1. 消化器外科専門医115術式の臓器別手術件数と性別,年齢区分(2011–2014年総計)
臓器 手術件数 性別の比率(%) 年齢区分の比率(%)
60歳未満 60歳以上65歳未満 65歳以上70歳未満 70歳以上75歳未満 75歳以上80歳未満 80歳以上
食道 33,728 81.8 18.2  21.5 18.3 20.9 20.0 13.0 6.4
胃・十二指腸 293,429 68.0 32.0  18.8 13.5 15.1 17.3 16.6 18.7
小腸・結腸 741,487 56.8 43.2  35.9 10.2 11.2 12.6 12.4 17.7
直腸・肛門 192,199 58.4 41.6  21.4 14.4 15.1 15.9 14.3 18.9
101,976 66.4 33.6  21.7 15.1 17.2 18.8 17.1 10.1
486,040 55.2 44.8  32.9 13.0 12.9 14.1 13.1 13.8
62,720 59.8 40.2  19.3 14.1 17.8 20.3 17.9 10.7
16,532 61.6 38.4  32.1 14.9 15.8 15.9 13.0 8.4
その他 128,214 54.1 45.9  29.6 11.0 12.3 14.0 14.3 18.3
2,056,325 59.0 41.0  29.5 12.3 13.3 14.7 13.9 16.3

手術の行われた施設区分では,全体では約7割が認定施設で行われ,特に食道(88.1%),肝(83.8%),膵(83.6%),脾(81.4%)では認定施設で行われた手術の比率が高かった.麻酔科医関与の比率は91.2%であり,67.5%の手術が専門医の関与のもとに行われていた(表2).

表2. 消化器外科専門医115術式における臓器別にみた施設区分と麻酔科医,専門医の関与(2011–2014年総計)
臓器 手術件数 施設区分の比率(%) 麻酔科医関与
の比率(%)
専門医関与
の比率(%)
術者(%)
認定施設 関連施設 その他 専門医 非専門医
食道 33,728 88.1 6.3 5.7 97.4 88.2 64.5 35.5
胃・十二指腸 293,429 74.0 17.6 8.4 93.3 72.3 36.9 63.1
小腸・結腸 741,487 70.6 20.6 8.8 89.5 62.1 26.4 73.6
直腸・肛門 192,199 70.7 20.0 9.3 86.8 70.6 39.0 61.0
101,976 83.8 9.9 6.3 95.9 86.9 57.4 42.6
486,040 67.7 22.4 9.8 92.1 64.5 27.1 72.9
62,720 83.6 10.1 6.4 96.1 87.2 59.9 40.1
16,532 81.4 11.6 6.9 95.0 76.0 44.4 55.6
その他 128,214 74.7 17.6 7.7 91.3 62.8 28.4 71.6
2,056,325 72.1 19.2 8.7 91.2 67.5 32.7 67.3

登録症例数は432,740(2011年),517,084(2012年),545,110(2013年),561,391(2014年)と経年的に増加し,総計の術後30日死亡率は1.5%,手術関連死亡率は,2.8%であった(表3).消化器外科専門医115術式の臓器別の症例数と死亡率の年次推移を図1に示す.

表3. 消化器外科専門医115術式における臓器別の手術件数と死亡率(2011–2014年総計)
臓器 手術件数 術後30日死亡数/率(%) 手術関連死亡数/率(%)
食道 33,728 440/1.3 1,210/3.6
胃・十二指腸 293,429 4,200/1.4 9,007/3.1
小腸・結腸 741,487 14,112/1.9 25,737/3.5
直腸・肛門 192,199 1,823/0.9 3,128/1.6
101,976 1,147/1.1 2,260/2.2
486,040 2,129/0.4 4,255/0.9
62,720 794/1.3 1,728/2.8
16,532 334/2.0 551/3.3
その他 128,214 5,484/4.3 9,015/7.0
2,056,325 30,463/1.5 56,891/2.8
図1 

消化器外科115術式の手術件数・30日死亡率・手術関連死亡率の年次推移

消化器外科専門医115術式の術式別手術件数を,登録年別に表412に臓器別に示した.

表4. 消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(食道)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年 2014年
食道 ​頸部食道周囲膿瘍ドレナージ 23 27 34 42
​食道縫合術(穿孔,損傷) 156 204 198 185
​胸部食道周囲膿瘍ドレナージ 22 23 18 27
​食道異物摘出術 19 21 26 25
​食道憩室切除術 27 32 35 48
​食道良性腫瘍摘出術 61 69 66 68
​食道切除術(切除のみ) 388 506 580 570
​食道再建術再建のみ(胃管再建) 699 844 888 799
​食道瘻造設 97 106 128 126
​食道噴門形成術 321 418 392 398
​アカラシア手術 77 109 84 118
​食道切除再建術 4,916 5,946 5,694 6,091
​食道再建術再建のみ(結腸再建) 65 56 63 77
​食道バイパス術 93 110 137 143
​食道気管支瘻手術 6 5 9 12
​食道二次的再建術 276 343 290 292
表5. 消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(胃・十二指腸)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年 2014年
胃・十二指腸 胃切開・縫合術 52 69 74 66
憩室,ポリープ切除術(内視鏡的切除は除く) 156 186 231 247
幹迷走神経切離術 3 6 6 2
胃腸吻合術(十二指腸空腸吻合術を含む) 4,651 5,330 5,571 5,893
胃瘻造設術(PEGを除く) 1,717 1,698 1,633 1,722
幽門形成術 116 129 115 126
胃捻転症(軸捻症)手術・吊り上げ固定術手術 40 38 39 0
胃縫合術(胃破裂に対する胃縫合,胃・十二指腸穿孔に対する縫合閉鎖術,大網充填術,大網被覆術を含む) 4,707 5,738 5,669 5,837
胃局所切除術(楔状切除を含む) 2,466 3,108 3,233 3,354
胃切除術(幽門側胃切除術,幽門保存胃切除術,文節(横断)胃切除術を含む) 34,160 38,750 39,957 38,584
選択的迷走神経切離術 8 8 10 7
胃全摘術(噴門側胃切除術を含む) 18,652 21,122 19,035 19,071
左上腹部内臓全摘術 12 4 10 11
表6. 消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(小腸・結腸)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年 2014年
小腸・結腸 腸切開・縫合術 2,982 3,505 4,025 4,362
腸重積整復術(観血的) 172 250 234 239
小腸部分切除術(良性) 5,792 7,602 8,564 8,938
回盲部切除術(良性) 3,238 4,104 4,313 4,472
結腸部分切除術・S状結腸切除術(良性) 4,946 6,239 6,626 7,358
虫垂切除術 43,437 51,316 54,421 54,319
腸瘻造設・閉鎖術(腸管切除なし) 15,192 19,371 21,600 23,425
小腸切除術(悪性) 2,448 2,703 3,016 3,082
回盲部切除術(悪性) 5,492 9,274 10,327 11,368
結腸部分切除術・S状結腸切除術(悪性) 25,034 29,863 31,495 32,092
結腸右半切除術 17,890 21,034 21,814 22,446
結腸左半切除術 5,241 5,347 5,644 5,763
結腸全摘除術 2,846 3,131 1,892 1,701
腸閉塞症手術(腸管切除を伴う) 5,117 6,496 7,412 7,775
腸瘻造設・閉鎖術(腸管切除あり) 11,008 14,162 16,853 19,049
大腸全摘回腸肛門(管)吻合術 308 413 441 468
表7. 消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(直腸・肛門)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年 2014年
直腸・肛門 経肛門的直腸腫瘍摘出術 2,483 3,300 1,657 1,513
直腸脱手術(経肛門的) 1,802 2,461 2,488 2,602
直腸切断術(良性) 300 386 2,196 2,060
高位前方切除術 7,053 8,920 8,985 9,496
Hartmann手術 3,562 4,614 4,865 5,194
直腸脱手術(腹会陰式) 659 996 1,119 1,181
直腸・肛門悪性腫瘍切除術(経肛門的) 1,517 1,037 898 864
肛門括約筋形成術(組織置換による) 969 1,378 1,721 1,718
直腸切断術(悪性) 5,308 5,828 4,474 4,531
低位前方切除術 16,984 20,321 21,096 21,861
骨盤内臓器全摘術 359 389 412 374
直腸・肛門悪性腫瘍切除術(後方アプローチ) 65 74 69 60
表8. 消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(肝)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年 2014年
肝縫合術 172 202 161 196
肝膿瘍ドレナージ術(経皮的手技を除く) 42 47 54 44
肝嚢胞切開.縫縮.内瘻術 425 535 606 695
肝部分切除術 9,431 10,919 10,708 11,598
肝バイオプシー(経皮的手技を除く) 122 264 176 165
肝凝固壊死療法術(経皮的手技を除く) 1,958 2,122 1,083 1,069
肝外側区域切除 1,390 1,632 1,773 1,807
食道・胃静脈瘤手術 94 109 67 61
肝切除術(外側区域を除く区域以上) 7,434 8,239 7,937 7,666
系統的亜区域切除術 996 1,353 2,374 2,257
肝移植術 692 775 757 848
肝膵同時切除術 99 91 118 112
表9. 消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(胆)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年 2014年
胆管切開術 142 163 174 139
胆嚢切開切石術 1,094 1,093 750 641
胆嚢摘出術 93,665 112,048 119,455 122,026
胆嚢外瘻術 104 119 127 124
胆嚢消化管吻合術 70 73 61 61
胆管切開切石術 3,682 4,117 3,880 3,574
胆道再建術 150 162 265 315
胆道バイパス手術 1,594 1,751 1,765 1,686
胆管形成術 201 180 192 168
十二指腸乳頭形成術 66 68 50 33
総胆管拡張症手術 217 240 254 242
胆汁瘻閉鎖術 43 42 42 37
胆嚢悪性腫瘍手術(単純胆嚢摘出術を除く) 869 1,013 929 963
胆管悪性腫瘍手術 1,268 1,426 1,202 1,153
胆道閉鎖症手術 18 18 16 20
表10. 消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(膵)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年 2014年
膵嚢胞外瘻術 29 27 13 21
膵管外瘻術 17 20 26 28
膵縫合術 22 17 21 34
膵部分切除術 126 148 202 182
膵体尾部切除術(良性) 1,018 1,398 1,372 1,557
膵嚢胞消化管吻合術 81 71 59 49
膵(管)消化管吻合術 223 295 309 388
急性膵炎手術 94 117 104 103
膵石症手術 17 17 14 35
膵頭神経叢切除術 1 1 2 0
膵頭十二指腸切除術 8,305 9,329 10,068 10,400
膵体尾部切除術(悪性) 2,861 3,344 3,483 3,750
膵全摘術 348 408 423 496
十二指腸温存膵頭切除術 201 193 111 85
膵区域切除術 131 163 138 165
膵体尾側切除術 3 2 35 20
表11. 消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(脾)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年 2014年
脾縫合術 22 35 26 24
脾摘術 3,564 4,063 4,457 4,215
脾部分切除術 23 44 26 33
表12. 消化器外科専門医115術式の術式別手術件数(その他)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年 2014年
その他 限局性腹腔膿瘍手術 2,526 2,944 3,231 3,262
試験開腹術 5,036 6,852 7,532 8,271
急性汎発性腹膜炎手術 7,753 9,177 10,447 12,085
腹壁ヘルニア手術 5,053 6,095 11,387 12,298
横隔膜縫合術 183 218 246 213
食道裂孔ヘルニア手術 511 602 725 757
後腹膜腫瘍手術 622 837 806 805
腹壁・腸間膜・大網腫瘍切除 979 1,398 1,402 1,509
消化管穿孔部閉鎖術 504 576 522 589
横隔膜裂孔ヘルニア手術 51 80 65 65

6.主たる8術式に関する結果

2011年1月1日から2014年12月31日の4年間に行われた主たる8術式の手術件数は年次別(2011年,2012年,2013年,2014年)に,食道切除再建術4,916例,5,946例,5,694例,6,091例,胃切除術(幽門側)34,160例,38,750例,39,957例,38,584例,胃全摘術18,652例,21,122例,19,035例,19,071例,結腸右半切除術17,890例,21,034例,21,814例,22,446例,低位前方切除術16,984例,20,321例,21,096例,21,861例,肝切除術(外側区域以外の区域)7,434例,8,239例,7,937例,7,666例,膵頭十二指腸切除術8,305例,9,329例,10,068例,10,400例,急性汎発性腹膜炎手術7,753例,9,177例,10,447例,12,085例であった(図2).

図2 

主たる8術式における手術件数年次推移

2014年の症例数で検討すると,男女比は全ての術式で男性が多かった.また,結腸右半切除術,急性汎発性腹膜炎手術では80歳以上の比率が高かった(表13).施設区分に関しては,おおむね7割以上が認定施設で行われ,特に食道切除再建術(93.6%),肝切除術(外側区域以外の区域)(88.2%),膵頭十二指腸切除術(86.4%)では認定施設で行われた手術の比率が高かった.麻酔科医関与の比率は全ての術式で90%以上であった.食道切除再建術,肝切除術(外側区域以外の区域),膵頭十二指腸切除術は90%前後が専門医の関与のもとに行われていた(表14).主たる8術式の死亡率を表15に示す.急性汎発性腹膜炎手術以外では,術後30日死亡率は0.3~1.3%,手術関連死亡率は0.7~2.7%であった.急性汎発性腹膜炎手術の術後30日死亡率,手術関連死亡率はそれぞれ7.7%,12.2%であった(表15).

表13. 主たる8術式の手術件数と性別,年齢区分(2014年)
術式 手術件数 性別の比率(%) 年齢区分の比率(%)
60歳未満 60歳以上65歳未満 65歳以上70歳未満 70歳以上75歳未満 75歳以上80歳未満 80歳以上
食道切除再建術 6,091 84.0 16.0  18.7 17.8 22.8 22.0 13.4 5.2
胃切除術(幽門側) 38,584 66.4 33.6  15.7 12.4 16.6 18.4 17.3 19.5
胃全摘術 19,071 73.7 26.3  14.0 12.3 17.2 20.1 18.9 17.5
結腸右半切除術 22,446 50.6 49.4  12.0 9.2 13.8 18.2 18.6 28.2
低位前方切除術 21,861 64.8 35.2  23.1 15.7 18.3 17.9 13.1 11.9
肝切除術(外側区域以外の区域) 7,666 69.2 30.8  18.5 13.8 18.5 21.6 17.6 10.0
膵頭十二指腸切除術 10,400 60.9 39.1  14.0 12.6 19.6 22.5 19.4 11.8
急性汎発性腹膜炎手術 12,085 61.2 38.8  28.4 9.5 12.2 12.3 12.9 24.7
表14. 主たる8術式における施設区分と麻酔科医,専門医の関与(2014年)
術式 施設区分の比率(%) 麻酔科医関与の比率(%) 専門医関与の比率(%) 術者
認定施設 関連施設 その他 専門医(%) 非専門医(%)
食道切除再建術 93.6 4.7 1.7 98.6 92.6 70.2 29.8
胃切除術(幽門側) 77.7 17.8 4.5 94.0 78.4 42.1 57.9
胃全摘術 77.8 17.9 4.3 94.4 77.7 41.7 58.3
結腸右半切除術 71.2 23.1 5.7 93.4 71.9 33.6 66.4
低位前方切除術 76.2 19.0 4.9 94.4 78.2 47.2 52.8
肝切除術(外側区域以外の区域) 88.2 8.7 3.1 96.7 92.3 66.6 33.4
膵頭十二指腸切除術 86.4 10.4 3.3 96.4 90.3 62.2 37.8
急性汎発性腹膜炎手術 77.7 17.2 5.1 91.9 63.3 25.1 74.9
表15. 主たる8術式の手術件数と死亡率(2014年)
術式 手術件数 Clavien-Dindo分類Grade 3以上/率(%) 術後30日死亡数/率(%) 手術関連死亡数/率(%)
食道切除再建術 6,091 1,178/19.3% 49/0.8% 140/2.3%
胃切除術(幽門側) 38,584 2,356/6.1% 264/0.7% 523/1.4%
胃全摘術 19,071 1,840/9.6% 185/1.0% 379/2.0%
結腸右半切除術 22,446 1,544/6.9% 287/1.3% 530/2.4%
低位前方切除術 21,861 2,098/9.6% 70/0.3% 152/0.7%
肝切除術(外側区域以外の区域) 7,666 1,052/13.7% 94/1.2% 208/2.7%
膵頭十二指腸切除術 10,400 1,847/17.8% 111/1.1% 267/2.6%
急性汎発性腹膜炎手術 12,085 2,966/24.5% 927/7.7% 1,472/12.2%

2011年から2014年までの年次推移について検討すると,施設区分に大きな変化は認められなかった(図3).なお,この期間において2012年のみ認定施設に含まれていない施設が18施設存在したために,2012年の認定施設の割合が全8術式において低下しているものと考えられた.専門医の関与割合は全8術式において増加していた(図4).手術関連死亡率は胃切除術(幽門側),胃全摘術,結腸右半切除術,低位前方切除術,膵頭十二指腸切除術には大きな変化は認められなかったが,食道再建術(3.2%→3.1%→2.8%→2.3%),肝切除術(4.1%→3.6%→3.7%→2.7%),急性汎発性腹膜炎手術(14.1%→14.0%→13.5%→12.2%)と減少が認められた(図5).

図3 

主たる8術式における施設区分年次推移

図4 

主たる8術式における専門医の関与年次推移

図5 

主たる8術式の手術件数・30日死亡率・手術関連死亡率の年次推移

7.謝辞

稿を終えるにあたり,本事業の推進に多大なる貢献をいただきました日本消化器外科学会事務局,NCD関係各位,データ入力にご尽力いただきました医師およびデータマネージャー各位に深謝いたします.

8.利益相反

本事業に関連して,開示すべき利益相反はありません.

文献
 

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