日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
多発肝転移・肝外門脈腫瘍栓を伴う胃内分泌細胞癌に対して集学的治療により長期生存が得られた1例
砂川 秀樹高橋 進一郎海藤 章郎布施 望桑田 健木下 敬弘
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2018 年 51 巻 1 号 p. 40-49

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Abstract

症例は60歳の男性で,心窩部痛精査の上部消化管内視鏡にて,胃体上部小彎に約70 mm大の腫瘍性病変を認め,生検で内分泌細胞癌と診断された.造影CTにて多発肝転移および肝外門脈腫瘍栓を認め,全身化学療法(CDDP+CPT-11)を6コース施行した.化学療法後の各種検査にて,原発巣・肝転移巣の縮小および門脈腫瘍栓の消失を認め,部分奏効と診断し,根治切除術(開腹胃全摘・D2 − No. 10郭清,肝S6部分切除)を施行した.病理検査にて,原発巣には内分泌細胞への分化を伴う癌細胞の残存を認めたが,切除肝には腫瘍細胞を認めず,ypT2,N0,M0,Stage IB,薬物治療の組織学的効果判定基準:Grade 2と診断された.術後化学療法は患者が希望しなかったため施行しなかった.現在,術後5年4か月経過し無再発生存中である.このように肝転移・肝外門脈腫瘍栓を伴う胃内分泌細胞癌に対しても,化学療法が奏効し非治癒切除因子が消失した場合には,外科的切除を含む集学的治療により長期生存が得られる可能性があると考えられた.

はじめに

胃内分泌細胞癌は胃癌の中でも0.6%1)と比較的まれな組織型であり,根治切除が施行できても,早期に遠隔転移再発を来すことが多く予後不良とされている2).今回,多発肝転移・肝外門脈腫瘍栓(portal vein tumor thrombosis;以下,PVTTと略記)を伴う胃内分泌細胞癌に対して,集学的治療により長期生存が得られた1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

症例

患者:60歳,男性

主訴:心窩部痛

既往歴:なし.

現病歴:上記主訴に対して前医で施行した上部消化管内視鏡にて,胃体上部に潰瘍性病変を指摘された.生検で内分泌細胞癌と診断され精査加療目的で当院を紹介受診となった.

身体所見:身長164 cm,体重74.7 kg,体表面積1.77 m2,吐下血既往なし,カルチノイド症状なし.

血液検査所見:貧血や肝機能異常を認めず(Hb:13.0 g/dl,AST:23 U/l,ALT:19 U/l),腎機能・電解質は基準値内であった.腫瘍マーカーはCEA:5.4 ng/ml,CA19-9:5.4 U/ml,NSE:22.0 ng/ml(基準値:16.3以下)と,NSEのみが若干上昇していた.

上部消化管内視鏡検査所見:胃体部小彎に,1/3周性・約70 mm大の腫瘍性病変を認めた.辺縁は境界明瞭な周堤が形成され,中心部には充実性の隆起を認めた(Fig. 1a).明らかな食道浸潤の所見はなかったが,腫瘍の進展は噴門直下まで認められた.

Fig. 1 

Endoscopic images: a; A large solid tumor is surrounded by a thickened gastric wall with clear margins located at the lesser curvature of the stomach before chemotherapy. b; The tumor markedly shrank after chemotherapy.

生検組織病理所見:大型核を有する核・細胞比(N/C比)の高い腫瘍細胞が充実性胞巣を形成しながら増殖していた.腫瘍細胞の免疫染色検査所見はchromogranin A少数陽性,synaptophysin陰性,MIB-180%以上陽性,CD56陽性であり内分泌細胞癌を示唆する所見であった(Fig. 2a~c).また,PAS染色陽性の淡明な胞体を有する腫瘍細胞が腺管構造を形成する腺癌成分を伴っていると考えられた(Fig. 2d).腺管を形成する成分の免疫染色検査所見はCD56陰性,chromogranin A陰性,synaptophysin陰性であった.

Fig. 2 

Pathological findings of the biopsy specimen sampled before chemotherapy: a; HE staining: Tumor cells with a high nucleocytoplasmic ratio proliferate in solid sheets. b; MIB-1: strongly positive. c; CD56: positive. d; HE staining of the adenocarcinoma component showing a tubular structure.

腹部造影CT所見:胃体部小彎に周囲の脂肪識濃度上昇を伴う造影効果の増強した不整な壁肥厚像を認め,胃癌の原発巣と考えられた(Fig. 3a).小彎側に最大長径25 mmのリンパ節を複数個認め,転移が疑われた(Fig. 3b).また,肝S6に径70 mm大のリング状の造影効果増強を伴う内部低吸収な腫瘤影を認めた(Fig. 3c).その他S1/8,S4,S7にも同様の腫瘤影を認め,多発肝転移の所見と考えられた(Fig. 3b).脾静脈から門脈本幹の内腔には造影効果を伴う低吸収域を連続性に認め,肝外PVTTと考えられる所見であった(Fig. 3c).

Fig. 3 

Images of enhanced CT scan performed before chemotherapy: a; Enhanced wall thickness surrounded by perigastric fat tissue with high density. b; Swollen lymph nodes around the lesser curvature (arrowheads) and multiple liver metastases (arrows). c; Portal vein tumor thrombosis (arrowhead) and liver metastasis located at S6 measuring, 70 mm in maximum dimension (arrow).

臨床経過:画像診断所見により多発肝転移および肝外PVTTを有する切除不能胃内分泌細胞癌(cT4a,N3,M1(OTH:PVTT),H1,Stage IV(胃癌取扱い規約第14版))の診断で,CPT-11:60 mg/m2(day 1, 15)/CDDP:30 mg/m2(day 1, 15)併用療法の隔週投与3)を開始した.2コース終了後のCTにて,多発肝転移・リンパ節転移・胃壁の肥厚は縮小し,部分奏効(partial response;以下,PRと略記)と判断した.5コース終了後のCTでは病変のさらなる縮小を認めた.食欲不振,悪心などの有害事象のため適宜休薬期間を延長しながら最終的に6コース施行した.5コース目は両剤ともに20%減量し,末梢神経障害が出現したため6コース目はCPT-11単独投与とした.化学療法6コース終了後の内視鏡検査では,原発巣は著明に縮小・平低化し,0-IIc様の浅い発赤陥凹として認められ,大彎側の周堤は0-IIa様の隆起として残存していた(Fig. 1b).同部の生検では,淡明な胞体を有する腺癌成分のみが検出された.CTでは,胃体部小彎の壁肥厚および周囲のリンパ節腫大は消失していた(Fig. 4a).また,肝転移はS6 1か所のみを残し全て消失し(Fig. 4b),肝外PVTTを示唆する低吸収域も消失していた(Fig. 4c).

Fig. 4 

Images of enhanced CT scan performed after chemotherapy: a; Reduced gastric wall thickness (arrowheads) and lymph node swelling (arrow). b; Reduced liver metastasis at S6 to 11 mm in diameter (arrowhead). c; Disappearance of portal vein tumor thrombosis (arrowhead).

以上より,ycT3,N0,M0,H1,Stage IV,化学療法後の効果判定(RECIST1.0)はPRと診断した.残存するS6の肝転移巣は切除可能と判断し,患者に十分な説明を行い,同意を得て,手術の方針となった.

手術所見:上腹部正中切開で開腹し,腹膜播種や腹水は認めず,腹腔内洗浄迅速細胞診は陰性であった.主病変は胃角小彎前壁部を中心とした瘢痕様病変として確認された.胃全摘およびD2 − No. 10リンパ節郭清を施行し,Roux-en Y法にて再建した.肝S6の残存病変は部分切除にて摘出した.手術時間は205分,出血量は224 mlであった.

術後経過:術後8日目に十二指腸断端縫合不全を発症し,ドレナージ治療を行っていたところ,術後19日目に脾動脈近位部からの出血を認め,経皮的血管内塞栓術にて止血した.その後,脾膿瘍を併発したがCTガイド下ドレナージにて改善し,術後70日目に退院した.

切除標本肉眼所見:胃体中部小彎を中心に,隆起性変化とその口側の陥凹性領域からなる40×32 mm大のType 0-IIa+IIc病変を認めた(白矢頭:病変1).また,その後壁側に12 mm大の集簇状の隆起性病変を認めた(白矢印:病変2)(Fig. 5a).部分切除された肝臓には,漿膜の瘢痕様変化を伴う12×10×10 mm大の白色調病変を認めた(Fig. 5b).

Fig. 5 

Macroscopic findings of formalin-fixed specimen: a; type0-IIa+IIc tumor located at the middle body of stomach (white arrowheads) concomitant with a polypoid lesion (white arrow). b; partially resected liver (S6): radial margin (yellow arrowheads), liver surface (yellow arrows).

病理組織学的検査所見:病変1において,隆起性変化部位には,N/C比の高い腫瘍細胞が胞巣状集塊となり粘膜下層以深に浸潤性増殖し一部固有筋層に達していた.腫瘍細胞の免疫染色検査所見は,chromogranin A陽性,CD56部分的陽性,synaptophysin弱陽性であり,形態学的所見と併せて,内分泌細胞癌に矛盾しない所見であった(Fig. 6).また,隆起性変化の周囲には淡明な胞体を有する腫瘍細胞が腺管構造を形成する腺癌成分が確認された.内分泌細胞癌領域では間質の線維化を認め,薬物治療の組織学的治療効果判定はGrade 2と判定した.リンパ管および静脈侵襲の所見はなかった.また,リンパ節転移は認めなかった.病変2は高円柱細胞が増生するも異型に乏しく腺腫と診断された.部分切除された肝臓にはcoagulation necrosisを認め,周囲には間質の線維化とヘモジデリンの沈着を認めるのみで,明らかな腫瘍細胞の残存はなかった.以上より,ypT2,N0,M0,Stage IBと診断した.

Fig. 6 

Pathological findings of the resected specimen: a; HE staining of a low-power field: Tumor cells forming solid nests invade the proper muscular layer with interstitial fibrous components. b; HE staining of a high-power field: tumor cells with high nucleocytoplasmic ratio form solid nests. c; Immunohistological examination for chromogranin A: strongly positive. d; CD56: focally positive. e; Synaptophysin: weakly positive.

術後化学療法の選択肢について患者に説明したが,希望しなかったため施行しなかった.現在,術後5年4か月が経過したが,無再発生存中である.

考察

WHO分類(2010年)では,内分泌系の細胞に由来する腫瘍は,neuroendocrine neoplasms(以下,NENと略記)と総称されている4).NENは,核分裂像数(/10HPF)やKi-67指数(%)をもとに神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;以下,NETと略記)と神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma;以下,NECと略記)に大別され,その臨床病理学的特徴や生物学的悪性度は大きく異なる.さらに,共存する腺癌成分とNEC成分との割合によってNEC(腺癌成分:30%未満),mixed adenoneuroendocrine carcinoma(MANEC)(腺癌成分:30%以上~70%未満),adenocarcinoma(腺癌成分:70%以上)に分類される.一方,胃癌取扱い規約第14版では内分泌細胞へ分化した腫瘍細胞胞巣形成を示すものを内分泌細胞癌と定義しており,腺癌成分に関しては共存することが多いと記述されているにとどまっている.このようにWHO分類のNECと,胃癌取扱い規約第14版の内分泌細胞癌は厳密には定義が異なるが,本稿では胃癌取扱い規約第14版に準じた記載とした.

胃内分泌細胞癌は胃癌全体の0.6%と比較的まれであり,通常の腺癌に比べ進行が速く75%が進行癌で発見されると報告され1),さらに日比ら5)は71例の検討で5年生存率:24.2%,生存期間中央値(median survival time;以下,MSTと略記):7か月とその高い悪性度とともに,早期癌でも肝転移再発を来しやすい特徴を報告している.胃内分泌細胞癌の辺縁粘膜には腺癌成分が共存することが多く,内分泌細胞癌成分は粘膜下層以深の浸潤部に認めると報告され1),先行して発生した分化型腺癌の中に発生した腫瘍性内分泌細胞が,粘膜深部において急速に塊状増殖し形成されると考えられている6)7).そのため,初期の肉眼型は通常の腺癌の形態としてとらえられるが,内分泌細胞癌成分が増殖するにつれて粘膜下腫瘍様の隆起型の形態へと変化していく特徴がある.

胃内分泌細胞癌は根治切除可能症例に対しては一般型胃癌と同様に外科的切除が第一選択となるが,前述の通り診断時に肝転移などの遠隔転移を来していることが多く,その場合は化学療法が一般的に選択される.胃癌治療ガイドライン第4版8)では内分泌細胞癌に限定した推奨レジメンの記述はないが,膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン第1版9)では肺小細胞癌の治療に準じ,白金製剤を基本とした併用療法が推奨されている(グレードC1).The National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドライン10)においても,遠隔転移を有する低分化神経内分泌腫瘍に対しては肺小細胞癌に準じた化学療法を行うことが推奨されている.

医学中央雑誌およびPubMedにて,2000年から2016年の間で「胃癌」,「内分泌細胞」,「肝転移」もしくは「gastric cancer」,「neuroendocrine」,「liver metastasis」で検索し,初診時に切除不能胃内分泌細胞癌と診断され,化学療法が奏効し根治切除が施行できた報告は,自験例を含めて7例であった(Table 111)~16).全例CDDPを含む化学療法が施行されており,肺小細胞癌の標準治療であるCPT-11/CDDPが3例,S-1/CDDPが3例,capecitabine/CDDP/trastuzumabが1例であった.術後補助化学療法は5例で施行されていた.7例中5例は初診時3個以上の肝転移を認めたが,化学療法後には肝転移巣2個以内もしくは消失したため手術を行っていた.術後観察期間中央値は71か月(6~63)であり,報告時点では全例無再発であった.

Table 1  A list of reported cases of stage IV endocrine carcinoma of the stomach radically resected after chemotherapy
No Author Year Age Sex Unresectable factors Chemotherapy (cycles) Surgery Adjuvant chemotherapy Recurrence Outcome (month) Pathological response
1 Tsushima11) 2008 59 M H S-1+CDDP (3) DG+PH DOC+S-1 None Alive 17 m Grade 3
2 Kirishima12) 2009 65 M H CPT-11+CDDP (3) DG DOC+S-1 None Alive 17 m Grade 3
3 Ohhinata13) 2010 68 M H S-1+CDDP→
CPT-11+CDDP (21)
DG+PH CPT-11+CDDP None Alive 34 m Grade 3
4 Onoyama14) 2011 70 M H CPT-11+CDDP (11) TG+PH S-1 None Alive 13 m Grade 2
5 Watanabe15) 2013 67 M H S-1+CDDP→S-1+PTX (6) DG S-1 None Alive 18 m Grade 1a
6 Hokonohara16) 2014 73 M H cape+CDDP+Tmab (3) DG+PH None None Alive 6 m Grade 0
7 Our case 60 M H, PVTT CPT-11+CDDP (6) TG+PH None None Alive 64 m Grade 2

H: hepatic metastasis, cape: capecitabine, CDDP: cisplatin, Tmab: trastuzumab, PTX: paclitaxel, CPT-11: irinotecan, PH: partial hepatectomy, DG: distal gastrectomy, TG: total gastrectomy, DOC: docetaxel

胃癌肝転移の外科的切除の意義に関してはエビデンスレベルの高い前向き研究はなく,明確なコンセンサスはない.現在のガイドラインでは,他の非治癒切除因子がない場合,症例によっては肝切除の適応となりうるとされている8).大規模な多施設後ろ向き研究ではKinoshitaら17)は,選択された症例において胃癌肝転移切除症例の5年生存率は42.3%,MSTは40.8か月であったと報告しており,予後不良因子として,原発巣の漿膜浸潤・肝転移個数≥3個・肝転移最大径≥5 cmが多変量解析で同定されたとしている.しかし,生物学的悪性度が異なる胃内分泌細胞癌の肝転移において,通常の胃癌肝転移と同様の治療戦略が妥当であるかは明らかでない.同時性肝転移を有する胃内分泌細部癌治療報告は,Table 1の他に,手術先行後に化学療法を施行した報告例18)~20)や化学療法単独治療の報告例21)~24)が散見されるが,どちらの治療群も少数例の報告にとどまる.

一方,PVTTは肝細胞癌で散見されるが,胃癌では0.14~0.7%25)26)とまれである.尾関ら27)は胃癌に関与する門脈腫瘍栓の発生機序として,①胃癌の門脈内直接浸潤,②胃癌肝転移巣から門脈内へ浸潤し腫瘍栓を形成,③胃癌と門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌の合併を挙げているが,本症例は肝転移巣とPVTTの位置が離れていたことより,癌細胞が門脈系へ直接浸潤し形成されたものと推測される.PVTTと肝転移を伴う胃癌症例に対して治癒切除が施行できた報告例は,我々の検索しえたかぎり自験例を含めて8例であった(Table 228)~34)(2000年から2016年までの期間で,「胃癌」,「腫瘍栓もしくは腫瘍塞栓」,「肝転移」をキーワードに医学中央雑誌を用いて検索).組織型の内訳は,分化型4例,低分化型2例,特殊型2例であり,内分泌細胞癌は本症例のみであった.術前化学療法が施行された3例は肝外PVTTであり,全例化学療法後に消失していた.一方,残りの5例の肝内PVTTは全例術前化学療法を施行せずに肝切除で完全切除されていた.ほとんどの症例において何らかの周術期化学療法が施行され,8例中6例は2年以上生存していた.以上,少数例の検討ではあるがPVTTと肝転移を伴う症例においても,化学療法後が奏効し非治癒切除因子が消失した場合には,外科的切除を含む集学的治療により長期生存を期待できる可能性が示唆された.

Table 2  A list of reported cases of advanced gastric cancer with portal vein tumor thrombosis and synchronous liver metastasis radically resected after chemotherapy
No Author Year Age Sex Histological type Chemotherapy Surgery Postoperative chemotherapy Outcome (month)
1 Maruyama 28) 2000 68 M tub2 none DG+H+PR 5-FU Alive 14 m
2 Shimamoto 29) 2003 74 M tub1/tub2 none TG+H none Dead 26 m
3 Tajima 30) 2004 71 M por none DG+H none Dead 6 m
4 Azuma 31) 2005 67 M AFP none TG+H 5-FU+CDDP Alive 62 m
5 Makino 32) 2013 71 F tub2 none DG+H S-1 Dead 46 m
6 Izumo 33) 2014 67 F tub2 S-1/CDDP DG+P+C S-1 Alive 30 m
7 Nishino 34) 2015 58 F muc S-1/CDDP TG+PH S-1 Alive 141 m
8 Our case 60 F NEC CPT-11/CDDP TG+PH none Alive 64 m

CDDP: cisplatin, CPT-11: irinotecan, TG: total gastrectomy, PH: partial hepatectomy, DG: distal gastrectomy, P: pancreatectomy, C: cholecystectomy, H: hepatectomy, PR: portal vein resection

本症例は,化学療法施行後にPVTTの消失と肝転移巣の縮小を認め,完全奏効を目指して化学療法を継続することを検討したが,患者は食欲不振,悪心などの有害事象を理由として休薬を希望した.また,膵NETに対するeverolimusとsunitinibの有効性が大規模臨床試験で認められ,それぞれ2011年と2012年に承認されたが,当時胃内分泌細胞癌に対して有望と考えられる新規薬剤の臨床試験は行われていなかった.さらに,化学療法の休薬中においても腫瘍の増大や新規病変の出現は認められなかったこと,残存する肝転移巣は切除可能と判断したことから,十分な説明を行い,患者の同意を得て外科手術を選択した.このような症例における,手術移行の適応基準やタイミングは明らかでなく,今後全国規模での検討が必要と思われる.

利益相反:なし

文献
 

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