2018 年 51 巻 1 号 p. nm1-nm4
毎年恒例としております会誌編集委員会からの年頭のご挨拶と本誌の現況を報告させていただきます.月例の委員会は順調に開催されております.昨年,11人の先生方が任期終了となり卒業されました.宇山一朗先生(上部),瀬戸泰之先生(上部),猶本良夫先生(上部),関本貢嗣先生(下部),正木忠彦先生(下部),大辻英吾先生(消化器一般),吉田和弘先生(消化器一般),伊佐地秀司先生(肝胆膵),山本順司先生(肝胆膵),八尾隆史先生(病理),赤澤宏平先生(統計)です.4~6年間の長きにわたり査読および編集会議へのご出席,有難うございました.心から御礼申し上げます.そして新しく13人の先生方に委員として加わっていただきました(表1).
委員長 | 遠藤 格 | |||
委 員 | 浅尾 高行 | 池内 浩基 | 市川 大輔 | 上坂 克彦 |
大塚 将之 | 掛地 吉弘 | 河原秀次郎 | 絹笠 祐介 | |
黒柳 洋弥 | 新地 洋之 | 大幸 宏幸 | 瀧口 修司 | |
竹内 裕也 | 竹政伊知朗 | 永野 浩昭 | 能城 浩和 | |
橋口陽二郎 | 長谷川博俊 | 比企 直樹 | 廣野 誠子 | |
福島 亮治 | 藤井 努 | 堀口 明彦 | 丸橋 繁 | |
村田 幸平 | 本山 悟 | 安田 卓司 | 山口 茂樹 | |
九嶋 亮治(病理学) | 菅井 有(病理学) | |||
全 陽(病理学) | 森田 智視(統計学) | |||
English language editor | J. Patrick Barron | 小島多香子 | ||
編集幹事 | 秋山 浩利 | 田中 邦哉 |
本誌の編集方針である,『邦文誌最高峰のクオリティー』と『若手の登竜門』というややもすれば背反する理想と現実の間隙を埋める解決策は,キラリと光るが未熟な論文に手間暇かけて磨きをかけることのみであると思っております.すなわち,簡単に不採用とせず,従来の採用論文と同じレベルまで引き上げる教育的な査読コメントをお願いしております.
本誌の採用論文数の年次推移を,表2に示します.以前からは減少しておりますが,今までの最少採用論文数である108編を記録した2014年よりは若干増えており,第50巻は合計で124編でありました.前述したように,最近はR3(三度目の修正論文),R4(四度目の修正論文)が増えたことがその証拠であります.それに伴って,2015年度には3年ぶりに採用率が27.8%に上昇し,2016年度も20%台を維持しております(表3).また特筆すべきことは女性外科医の投稿数,掲載数が増えている傾向があげられます.過去5年間の巻ごとの全掲載数における女性外科医の論文の割合(概算)は,46巻:2%,47巻:8%,48巻:8%,49巻:11%,50巻:15%,と徐々に増加している状況です.まだまだ比率は少ないですが,ぜひ今後も増加してほしいと思っております.
年(巻) | 原著 | 総説 | 症例報告 | 臨床経験 | 研究速報 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2009年(42巻) | 22 | 0 | 176 | 5 | 1 | 204 |
2010年(43巻) | 17 | 2 | 175 | 9 | 0 | 203 |
2011年(44巻) | 23 | 0 | 191 | 13 | 0 | 227 |
2012年(45巻) | 7 | 0 | 150 | 3 | 0 | 160 |
2013年(46巻) | 7 | 0 | 110 | 6 | 1 | 124 |
2014年(47巻) | 10 | 0 | 98 | 0 | 0 | 108 |
2015年(48巻) | 10 | 0 | 120 | 4 | 0 | 134 |
2016年(49巻) | 18 | 0 | 138 | 3 | 0 | 159 |
2017年(50巻) | 10 | 1 | 112 | 1 | 0 | 124 |
年度 (5月から翌年4月まで) |
投稿論文数 | 採用率 | 不採用率 |
---|---|---|---|
2009年度 | 485 | 35.9% | 42.9% |
2010年度 | 443 | 29.8% | 47.6% |
2011年度 | 353 | 23.2% | 54.1% |
2012年度 | 319 | 23.5% | 52.4% |
2013年度 | 275 | 17.8% | 42.6% |
2014年度 | 240 | 18.3% | 24.6% |
2015年度 | 223 | 27.8% | 32.3% |
2016年度 | 251 | 20.3% | 27.9% |
論文全文へのアクセス数は2016年度330,921件(前年度:268,571件)であり,前年に比べ大幅に増加し,初めて年間30万を超えました.また,月単位でも2016年5月のアクセス数は36,117件と初めて3万5千を超え,4月から7月は4か月連続で3万超え,2017年2月および4月にも3万以上のアクセスがあるなど,閲覧数が伸びております.
また,2017年11月にJ-STAGEがリニューアルされ,インターフェイスがモバイル向けに刷新されたことも伴い,12月は月間アクセス数がはじめて5万を超えました.今後,更にアクセス数が伸びることを想定しており,ますます市民の皆様をはじめとする社会への貢献度が高まると思います.
本誌は1969 年に村上忠重先生を初代委員長として創刊されました(表4).編集委員長の任期は鍋谷欣市先生の14 年間が最長となりますが,第5代の上西紀夫先生,第6代の桑野博行先生は6 年間務められました.大きな変化としましては,2002年に電子ファイルでの投稿が始まり,2010年にオンライン投稿・査読ができるようになったことが挙げられます.これで一気に利便性が増し,2014年からは編集会議のWeb化となりました.来年の2019 年には創刊50周年となります.いくつか企画を考えておりますのでご期待ください.
1968年 | 日本消化器外科学会発足. |
1969年 | 初代委員長 村上 忠重,日本消化器外科学会雑誌第1巻第1号発行. |
1970年 | 事務所移転(横浜市立大学第二外科→東京女子医科大学消化器病センター) |
1976年 | 日本医学会加盟. |
1979年 | 担当理事 長尾 房大,第二代委員長 鍋谷 欣市 |
1982年 | 事務所移転(九段南) |
1987年 | 担当理事 杉浦 光雄 |
1988年 | 担当理事 岩崎 洋治 |
1989年 | 英文要旨を追加. |
1991年 | 担当理事 大原 毅 |
1993年 | 担当理事 鈴木 博孝,第三代委員長 大原 毅,誓約書を追加. |
1995年 | 論文種目「臨床経験」を追加. |
1997年 | 表紙をデザイン化,編集後記の掲載を開始. |
1998年 | 担当理事 嶋田 紘,第四代委員長 佐治 重豊,著者名を10名以内に限定,入会免除依頼の受け付けを開始(病理医などの他科を想定). |
2000年 | 論文種目「総説」を追加,査読希望領域欄を追加,学会公式サイトを公開. |
2001年 | 第五代委員長 上西 紀夫,査読体制変更(臓器別),Digestive Surgeryを公式英文誌化. |
2002年 | データ添付投稿の受け付けを開始(FD,MO,CD). |
2004年 | 学会独自のオンライン・ジャーナルサイトを公開. |
2006年 | 事務所移転(茅場町),理事長制導入. |
2007年 | 担当理事 安藤 暢敏,第六代委員長 桑野 博行,文献検索期間の明示を義務化,平成19年度電子アーカイブ対象誌に選定(Journal@rchive),会誌編集委員会からの公示を掲載開始. |
2010年 | 事務所移転(新富),オンライン投稿・査読システムを導入,予稿集を電子化. |
2011年 | J-STAGEへ移行,会誌完全電子化,メールマガジン配信開始,CrossRef利用開始(DOI付加),委員会の体制を強化(統計学の委員,English language editor). |
2012年 | 担当理事 渡邊 昌彦,Top publications in Japanese和文ジャーナル上位100誌にて8位(Google Scholar Metricsより),J-STAGE 3公開,全文HTML公開,論文種目「特別報告」を追加,「日本消化器外科学会雑誌 英文作成上の注意(監修:東京医科大学国際医学情報学講座)」「日本消化器外科学会雑誌 用字用語について(公用文作成の要領などを基に作成)」を公開,投稿時の動画資料への対応を開始. |
2013年 | 第七代委員長 遠藤 格,委員を増員,学術情報XML推進協議会に加盟,DOIの付番ルール変更(早期公開機能への対応),和文の索引用語を追加,動画資料を含む記事を掲載,特別報告(NCD Annual report)・特別寄稿(英語による教育コンテンツ)を掲載,抄録・引用文献データベース「Scopus」の収載状態を整理. |
2014年 | NLMのElectronic linkを修正,Web会議システムを導入,J-STAGEの改善によりGoogle Scholarとの連携を強化. |
2015年 | 特別報告(医療安全委員会)を掲載,J-STAGE利用者アンケートに協力,投稿規程を改正(著者数制限の変更,貢献度の申告,連絡責任者及び保証者の明示,用字用語についての変更(日本医学会 医学用語辞典に準拠),図表枚数制限の緩和,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-ND(表示-非営利-改変禁止))の導入. |
2016年 | 投稿規程を改正(ギフトオーサーの追加の抑止,倫理審査番号の原則明示,英文要旨と英文の索引用語情報は採用後の提示に,チェックリスト・原稿テンプレートを開示),メールマガジンへの会告・広告掲載開始,メールマガジンのデザインを更改(モバイルファースト) |
2017年 | J-STAGEにてGraphical Abstractを表示開始,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC(表示-非営利))へ変更,J-STAGE刷新. |
2001年にDigestive Surgeryを公式英文誌としましたが,ご存じのようにKarger社との契約を2015年12月で終了し,念願であったOwn journalを2017年4月に創刊いたしました.誌名はAnnals of Gastroenterological Surgery(AGS)といたしました.消化器外科学・外科腫瘍学における最先端の研究を世界に発信するという目標をもっております.世界各国で次々と新雑誌が創刊されている現在,まさに生存競争のなかに飛び込むことになります.生き残るためには戦略が必要であり,まずは厳選された論文を中心に掲載していく方針であります.創刊当初2~3年間はImpact Factorが付与されませんが,ぜひ会員の皆様からの投稿をお待ちしております.
研究倫理問題に関しては毎年掲載しておりますが,注意喚起という目的で再掲させていただきます.まずJDDW(日本消化器関連学会機構)の倫理指針が改訂されます.自施設のIRB(Institutional Review Board)を通過し,臨床試験を公的機関(UMIN臨床試験登録システム,日本医師会治験促進センター臨床試験登録システム,日本医薬情報センターなど)に登録することが求められます.JAMJE(日本医学雑誌編集者会議)のガイドラインでも査読委員はWHO国際臨床試験登録プラットフォームから検索できるような登録システム(UMIN)に登録されているか否かをチェックすることが求められております.『人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(案)』によれば,今後は,侵襲(軽微な侵襲を除く)・介入を伴う研究について,研究責任者に対し,モニタリングや第三者的な立場の者による監査の実施が新たに義務付けることも予定されています.
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/1350816.htm
本編集委員会の一人でもあるJ. Patrick Barron先生が監修をされているサイトにCOPEのフローチャートの日本語版が掲載されています.最近問題となることの多い研究計画の倫理,あるいは多重投稿に関する問題などが丁寧かつわかりやすく書かれています.多重投稿に関する対応は,COPE(Committee On Publication Ethics: http://publicationethics.org/)のフローチャートに従って対応いたします.著者の先生方にも『出版倫理』のページをぜひ参考にしていただきたいと思います.
http://www.ronbun.jp/ethic/index.html
以上,日本消化器外科学会会誌編集委員会の,2018年年初における基本的姿勢と今後の予定について記しました.本誌の基本理念「和文誌の最高峰を維持する」「若手消化器外科医の登竜門」という理念を堅持し,委員一同精励してまいります.
(文責:日本消化器外科学会会誌編集委員会委員長 遠藤 格)
(2018年1月)