2018 年 51 巻 2 号 p. 170-177
症例は68歳の女性で,近医にて大腸ポリープの切除後のフォローアップ目的で下部消化管内視鏡検査を施行され,直腸神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;以下,NETと略記)の診断で当科紹介となった.CTでリンパ節転移を認め,リンパ節転移を伴う直腸NETの術前診断で括約筋間直腸切除術,D3郭清,回腸人工肛門造設術を施行した.切除標本で最大8×4 mmの4個の粘膜下病変を認め,病理検査でいずれも直腸NET(G2:1個/G1:3個)と診断された.#251領域にリンパ節転移2個を認める他に,節外転移を5個認めた.術後補助化学療法としてS-1を6か月内服した.術後1年6か月に右鼠径リンパ節再発を認め摘出術を施行し,病理検査でNET G2の異時性リンパ節転移と診断した.今回,リンパ節転移に加え,節外転移を認めた多発直腸NETが鼠径リンパ節再発を来した症例を経験した.