2019 年 52 巻 1 号 p. nm1-nm3
毎年,委員の交代はあるものの本誌の基本理念である『和文誌の最高峰』,『若手消化器外科医の登竜門』を堅持すべく,投稿論文の査読・審査を続けている.投稿論文数は減少傾向ではあるが,キラリと光るものがある論文は大切に査読し,著者と査読者の共同作業によって素晴らしい論文になっている.ぜひ不採用を恐れて躊躇することなく,積極的に投稿していただきたい.本誌のPDFのダウンロード数は右肩上がりの増加を続けており,学会の貴重な財産であるだけでなく,大きな社会貢献となっている.今後は,さらに論文・雑誌の質の向上を目指し,原著論文の増加,招待論文としてレビュー論文を掲載するなど新企画を立てていきたい.
新年明けましておめでとうございます.
会誌編集委員会からの年頭のご挨拶と本誌の現況を報告させていただきます.昨年は3人の先生が任期終了となり,卒業されました.池内浩基先生(下部),河原秀次郎先生(下部),橋口陽二郎先生(下部)です.6年間の長きにわたり,査読および編集委員会へのご出席,ありがとうございました.心から御礼申し上げます.代わりに大阪大学消化器外科学講座の水島恒和先生に就任していただきました(表1).10月から新体制で順調に委員会を行っております.
委員長 | 遠藤 格 | |||
委員 | 浅尾 高行 | 市川 大輔 | 上坂 克彦 | 大塚 将之 |
掛地 吉弘 | 絹笠 祐介 | 黒柳 洋弥 | 新地 洋之 | |
大幸 宏幸 | 瀧口 修司 | 竹内 裕也 | 竹政伊知朗 | |
永野 浩昭 | 能城 浩和 | 長谷川博俊 | 比企 直樹 | |
廣野 誠子 | 福島 亮治 | 藤井 努 | 堀口 明彦 | |
丸橋 繁 | 水島 恒和 | 村田 幸平 | 本山 悟 | |
安田 卓司 | 山口 茂樹 | |||
九嶋 亮治(病理学) | 菅井 有(病理学) | |||
全 陽(病理学) | 森田 智視(統計学) | |||
English language editor | J. Patrick Barron | 小島多香子 | ||
編集幹事 | 秋山 浩利 | 大田 貢由 |
毎年数名の先生が交代されますが,問題が全くないわけでもありません.それは初稿を査読した先生と修正稿を査読した先生が異なることがある点です.R1,R2から査読される場合,多くの場合はそのまま採用になりますが,修正稿を新しく入ってこられた査読者が読んで,新たな問題点を指摘されることもあります.その場合,著者からみると,初回の査読で指摘されたこととは異なる指摘がなされることになり,腑に落ちない気持ちになるかもしれません.ただ,本誌の基本理念である『和文誌の最高峰』,『若手消化器外科医の登竜門』を堅持することを第一義にしておりますので,論文が良くなる方向であれば労苦を厭わずぜひ修正していただきたいと編集委員会としては思っております.この点,投稿される先生方にはご了承いただきたく存じます.
投稿論文数は2017年度も引き続き減少傾向となっています.これが若い先生の和文誌離れなのか,本誌の査読が厳しすぎるために他誌への投稿に流れているのかは不明であります.学会・研究会で発表される症例報告が減少したとは聞いておりませんので,やはり採用されやすい雑誌に投稿されているのかもしれません.表2のごとく,採用率は数年前に18%まで下がり,かなり厳しい数字になっておりましたが,近年20%~36%と上昇傾向となっております.査読者の先生方になるべくキラリとしたものがある場合には,再査読で磨きをかけていただくようにお願いしている結果がでてきたように思います.ぜひ,積極的に投稿をお願いできましたら幸いです.
年度 (5月から翌年4月まで) |
投稿論文数 | 採用率 | 不採用率 |
---|---|---|---|
2009年度 | 485 | 35.9% | 42.9% |
2010年度 | 443 | 29.8% | 47.6% |
2011年度 | 353 | 23.2% | 54.1% |
2012年度 | 319 | 23.5% | 52.4% |
2013年度 | 275 | 17.8% | 42.6% |
2014年度 | 240 | 18.3% | 24.6% |
2015年度 | 223 | 27.8% | 32.3% |
2016年度 | 251 | 20.3% | 27.9% |
2017年度 | 183 | 36.6% | 49.2% |
昨年,2018年は第51巻になります.掲載論文数は100編でした(表3).本誌の強みはその歴史にあります.多くの貴重な論文がアーカイブされていますので,日本全国,世界各国から参考にされ,PDFがダウンロードされています.全文PDFへのアクセス数は,2017年度は550,753件であり,2016年度の330,921件に比べ20万アクセス以上の大幅増加を記録しました.月単位でみますと,2017年6月から2018年4月は11か月連続で4万アクセスを超え,2018年1月のアクセス数はついに63,157件と初めて6万を超えました.このように本誌は学会の貴重な財産であるだけでなく,『知の泉』として欠くことのできないものでもあり,社会貢献度は誠に大なるものと言って良いと思います.
年(巻) | 原著 | 総説 | 症例報告 | 臨床経験 | 研究速報 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2009年(42巻) | 22 | 0 | 176 | 5 | 1 | 204 |
2010年(43巻) | 17 | 2 | 175 | 9 | 0 | 203 |
2011年(44巻) | 23 | 0 | 191 | 13 | 0 | 227 |
2012年(45巻) | 7 | 0 | 150 | 3 | 0 | 160 |
2013年(46巻) | 7 | 0 | 110 | 6 | 1 | 124 |
2014年(47巻) | 10 | 0 | 98 | 0 | 0 | 108 |
2015年(48巻) | 10 | 0 | 120 | 4 | 0 | 134 |
2016年(49巻) | 18 | 0 | 138 | 3 | 0 | 159 |
2017年(50巻) | 10 | 1 | 112 | 1 | 0 | 124 |
2018年(51巻) | 5 | 0 | 92 | 3 | 0 | 100 |
それでは何も問題がないかというとそうでもありません.『論文・雑誌の質』を評価するときに,他の研究者からどれくらい引用されたかということが重要な指標になることは良く知られています.その点を考えますと,最近本誌に採用される原著論文が減少傾向にあるのは残念な点です.本誌をさらに活性化するためには,優秀な原著論文やレビュー論文を掲載する必要があります.本年はイノシシ年です.元号も変わります.本誌も新しい企画を発足させ,猪突猛進でさらなる高みを目指して委員一同,頑張る所存であります.会員の諸先生方におかれましては,ご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます.
(文責:日本消化器外科学会会誌編集委員会委員長 遠藤 格)
(2019年1月)