2019 年 52 巻 3 号 p. 166-175
症例は73歳の女性で,腹腔鏡下胆囊摘出術後のpT2(SS)偶発胆囊癌のため肝床部切除術が追加された.しかし,術中肝切離面には多数の微少結節を認め,術後病理検査にてそれらは全て転移巣と判明し,胆囊癌pT3a(肝臓),pN1,M1(肝臓),pStage IVBと診断された.術後gemcitabine+S-1療法(以下,GS療法と略記)を開始したが,開始時より6か月間一貫して肝転移病変を認めなかった.術中所見からは,肝切離面に転移巣が遺残しており,確実なR0切除達成のため三期的手術として肝中央下区域切除術を追加した.切除標本には2か所の微少肝転移を認めたが,各々90%および50%の壊死を伴っていた.術後は再度GS療法を6か月間施行し,現在初回治療開始後2年3か月で無再発生存中である.計3度の手術を要したが,術前後の化学療法を含めた集学的治療によりR0切除を達成しており,長期生存の可能性も示唆された.