日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
原著
潰瘍性大腸炎に対する結腸亜全摘術後に残存大腸の大量出血を生じた症例の臨床経過
阿部 有佳小金井 一隆黒木 博介二木 了辰巳 健志杉田 昭
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2020 年 53 巻 10 号 p. 759-767

詳細
Abstract

目的:分割手術の初回手術として結腸亜全摘術を施行した重症の潰瘍性大腸炎症例では,術後早期合併症として残存大腸から大量出血を生じることがある.結腸亜全摘術後残存大腸からの大量出血例の経過と臨床像を明らかにし,治療戦略を検討した.方法:当院で結腸亜全摘術後に残存大腸から大量出血を生じた6例を対象として臨床経過を検討した.結果:残存大腸出血に対する術式は,残存大腸切除が5例,全身麻酔下経肛門的縫合止血術が1例であり,残存大腸切除を施行した5例中,Hartmann手術を3例,回腸囊肛門管吻合を2例に行った.現在,二期目手術予定の1例を除いた5例で人工肛門の閉鎖と自然肛門の温存が可能であった.結語:重症潰瘍性大腸炎に対する結腸亜全摘術後は,残存大腸からの出血を念頭に置き,大量出血を生じた場合は,局所止血が困難であることから原則として出血源を含めた残存大腸切除を時機の遅れなく行うことが重要である.

Translated Abstract

Purpose: Hemorrhage from the residual rectum after subtotal colectomy for ulcerative colitis is a rare but dreaded complication. The aim of this study was to examine the clinical course, management, and outcome of hemorrhage from the residual rectum after subtotal colectomy for ulcerative colitis. Materials and Methods: A retrospective observational study was conducted on 6 consecutive patients who suffered from hemorrhage from the residual rectum after undergoing subtotal colectomy for ulcerative colitis at our institution. Result: As the surgical hemostasis, five patients underwent proctectomy, and 1 underwent suturing for bleeding of the perianal area. Among five patients who underwent proctectomy, 3 underwent partial resection of the rectum and Hartmann closure, and 2 underwent complete proctectomy, ileal pouch-anal canal anastomosis and ileostomy. Among 6 patients who suffered from hemorrhage from the residual rectum, 5 patients underwent ileostomy take-down. Conclusion: Massive hemorrhage from the residual rectum after subtotal colectomy for ulcerative colitis is a serious complication. Because local perianal hemostasis for massive hemorrhage is often difficult and fails, it is necessary to perform proctectomy immediately including the bleeding area.

はじめに

潰瘍性大腸炎に対する標準術式は大腸全摘,回腸囊肛門吻合術(ileal pouch anal anastomosis;以下,IAAと略記),あるいは回腸囊肛門管吻合術(ileal pouch anal canal anastomosis;以下,IACAと略記)である.これらの術式を分割手術で行う場合,第1期目手術が結腸亜全摘,S状結腸粘液瘻造設,回腸人工肛門造設術であれば,罹患部腸管であるS状結腸,直腸が残存する.本術式は重症例のうち,低栄養をはじめとした全身状態が不良な例やIACAを予定した症例で吻合部となる肛門管に深い潰瘍を合併した例などで選択されることが多い.残存大腸からの大量出血は術後に4.5%1)から12%2)の頻度で生じ,出血性ショックに至る例や死亡例も報告されていることから1)的確な治療が必要である.

目的

重症潰瘍性大腸炎に対する結腸亜全摘術後,残存大腸出血を合併した症例の臨床経過を明らかにすることにより残存大腸出血に対する治療戦略を検討した.

方法

2000年から2015年までに重症潰瘍性大腸炎に対して当科で初回手術を施行した症例は255症例あり,初回術式は結腸亜全摘術:121例,一期的IACA:116例,IACA,回腸人工肛門造設術:7例,大腸全摘,回腸永久人工肛門造設術:11例であった.結腸亜全摘術を施行した121例中,術後に残存大腸からの大量出血を合併した6例(5.0%)を対象とした.重症例の判定基準は厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等制作研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班)の潰瘍性大腸炎診断基準3)の臨床的重症度による分類を用いて評価した.大量出血は急速な貧血の進行や出血性ショックを伴うものとし,保存的治療で出血が軽快した症例は除外した.残存大腸からの大量出血を合併した症例の臨床的特徴,大量出血に対する治療と経過を検討した.

結果

残存大腸からの大量出血を合併した6例は男性3例,女性3例,年齢の中央値は46歳(27歳から63歳),潰瘍性大腸炎発症から初回手術までの期間の中央値は25か月(2か月から334か月),全例が全大腸炎型であった(Table 1).初回の手術適応は大量出血を伴う重症例が3例(症例1,2,3),中毒性巨大結腸症が2例(症例3,4),ステロイド大量静注療法や白血球除去療法が奏効しない重症例が2例(症例5,6),穿孔性腹膜炎が1例(症例4)であった(重複あり).結腸亜全摘術を選択した理由は,吻合部となる肛門管に深掘れ潰瘍を合併した例が5例(症例1~3,5,6),穿孔による急性汎発性腹膜炎合併が1例(症例4)であった.

Table 1  Characteristics of our cases
Case Age Sex Type of colitis Period from onset of UC (months) Indication of 1st operation Reasons of STC Year of STC
1 47 male total colitis 3 Massive hemorrhage (Hb 7.8 g/dl) Deep ulcer in anal canal 2001
2 27 female total colitis 2 Massive hemorrhage, Hemorrhagic shock (Hb 5.4 g/dl) Deep ulcer in anal canal 2013
3 38 male total colitis 124 Massive hemorrhage (Hb 7.9 g/dl), Toxic megacolon Deep ulcer in anal canal 2015
4 63 male total colitis 2 Toxic megacolon, Perforation Panperitonitis with perforation 2015
5 46 female total colitis 25 Acute severe colitis without response to medical treatment Deep ulcer in anal canal 2010
6 63 female total colitis 334 Acute severe colitis without response to medical treatment Deep ulcer in anal canal 2012

STC: subtotal colectomy

結腸亜全摘施行121例で術前の大量出血の有無を見ると,術前から大量出血を認めた12例中,術後に大量出血を生じた例は3例(25%)で,術前に大量出血がなかった109例中,術後に大量出血を生じた例は3例(2.8%)であった.

結腸亜全摘術後残存大腸からの大量出血が生じるまでの期間は3日から7日であった(Table 2).

Table 2  Clinical courses of our cases
Case Timing of hemorrhage Subsequence of hemorrhage Initial treatment to hemorrhage Endoscopic procedure Timing of 2nd operation Deep ulcers in anal canal Intarabdominal infection Surgical procedure for 2nd operation Reasons of surgical procedure Postoperative course of 2nd operation
1 POD5 Hemorrhagic shock Emergency operation None POD5 (+) (+) Partial resection of rectum, Hartmann closure Severe inflammation caused by intraabdominal abscess Bleeding from remnant rectum (POD1 and POD7 from 2nd operation)→Per anal suturing
2 POD3 Hemorrhagic shock Emergency operation None POD3 (+) (−) Completion proctectomy, IACA+ileostomy No complex adhesion and severe inflammation No complication
3 POD7 Progressive anemia Endoscopic treatment (POD7, 9) Clipping POD10 (+) (+) Partial resection of rectum, Hartmann closure Severe inflammation caused by intraabdominal abscess No complication
4 POD4 Progressive anemia Endoscopic treatment (POD11, 24) Clipping POD25 (+) (+) Partial resection of rectum, Hartmann closure Severe inflammation caused by perforation at 1st operation and liver cirrhosis No complication
5 POD4 Hemorrhagic shock Emergency operation None POD4 (+) (−) Per anal suturing Localized bleeding from lower rectum No complication
6 POD6 Progressive anemia Endoscopy→Emergency operation Assessment POD6 (+) (−) Completion proctectomy, IACA+ileostomy No complex adhesion and severe inflammation No complication

POD: postoperative days, IACA: ileal pouch anal canal anastomosis

6例中,3例は出血性ショックのため同日に緊急手術を行い(症例1,2,5),ショックに至らなかった3例では内視鏡的止血術を試みた(症例3,4,6).後者のうち,1例は出血点が同定できず,同日緊急手術を行い(症例6),2例は内視鏡的に止血が得られたものの出血を繰り返したため,結腸亜全摘術後,それぞれ10日目と25日目に手術を行った(症例3,4).

施行した手術術式は残存大腸切除が5例,経肛門的縫合止血術が1例であった.経肛門的縫合止血術を施行した1例はその後出血を認めなかった.残存大腸切除を施行した5例中,腹腔内感染や高度な炎症性癒着を有した3例(症例1,3,4)には再建を行わずに直腸部分切除,Hartmann手術を,腹腔内の炎症が軽度であった2例に残存直腸切除,IACAを行い,肛門管の潰瘍が残存していたため一時的回腸人工肛門造設を行った(症例2,6).再建せずHartmann手術のみとなった3例中,2例は止血が得られたが(症例3,4),残りの1例は再度残存直腸からの出血を認め,全身麻酔下に経肛門的縫合止血術を2回行った(症例1).残存大腸切除を必要とした5例の切除標本には広範に深掘れ潰瘍を認めた.

Hartmann手術後に再出血した1例(症例1)を除く5例は術後合併症なく経過し,術後22~25日で退院となった.第2期目手術を予定し,未施行の1例を除いた5例で,IACAを施行し,自然肛門温存が可能であった.

以下,出血部位や縫合不全リスクにより治療方針の異なった3症例を提示する.

症例1:47歳,男性

術前経過:潰瘍性大腸炎発症2年後に再燃し,重症の診断で入院した.入院時は排便回数30回/日,顕血便(+),体温37.5°C,脈拍107回/分で,血液生化学検査所見ではHb 14.7 g/dl,CRP 14.6 mg/dl,WBC 15,600/μlであった.ステロイド大量静注療法を施行し,排便回数は16回/日まで減少したが,血便が増加し,Hb 7.1 g/dlと貧血が進行したため,入院16日目,手術の方針とした.肛門管に深い潰瘍を認めたため,結腸亜全摘,S状結腸粘液瘻造設,回腸人工肛門造設術を行った(Fig. 1a).

Fig. 1 

a, b: Resected specimen showed diffuse ulcers involving the muscle layer. There is scarce mucosa throughout the entire colon and rectum.

術後経過:術後5日目に残存大腸から大量出血を認め,収縮期血圧73 mmHg,Hb 5.4 g/dlと低下したため緊急手術を行った.出血部位の確認を目的とした内視鏡検査は大量出血およびショックのため行わなかった.

第2回目手術:粘液瘻の離開を合併し腹腔内に大量の膿汁の貯留があり,高度の癒着と腹腔内感染を認めたため再建は行わず,直腸部分切除,Hartmann手術を行った.次回再建時に直腸を安全に同定することを目的とし,直腸は腹膜翻転部口側1 cmで縫合閉鎖した(Fig. 1b).

第2回目手術後経過:2回目手術翌日に残存直腸から出血し,全身麻酔下で経肛門的に縫合止血術を行った.有柄肛門鏡の観察で歯状線直上の潰瘍から鮮血の流出を認め,縫合止血した.術後7日目に再度残存直腸から出血し,2回目の全身麻酔下経肛門的縫合止血術を行った.前回止血部位の近傍に3か所出血点を認め,縫合止血した.その後は出血なく経過し,結腸亜全摘術後30日目に退院した.5か月後の内視鏡検査で肛門管の潰瘍は治癒していたため,残存直腸切除,IACAを行った.回腸囊が機能してから16年6か月経過した現在,全身状態も良好である.

症例2:27歳,女性

術前経過:前医入院1か月前に下痢と血便が出現した.前医受診後,潰瘍性大腸炎,重症と診断され入院となった.ステロイド大量静注療法,白血球除去療法を施行し,排便回数は減少傾向であったが,入院35日目,突然に大量出血し出血性ショックとなったため緊急手術目的に当科へ転院した.Alb 1.2 g/dlと低栄養状態で,肛門管に深い潰瘍を認めたため結腸亜全摘術,S状結腸粘液瘻造設,回腸人工肛門造設術を行った(Fig. 2a).

Fig. 2 

a, b: Resected specimen of the colon showed multiple deep ulcers involving the muscle layer and relative sparing of the sigmoid colon. While the muscle layer was widely exposed, hardly any mucosa remained in the rectum.

術後経過:術後3日目に突然,残存大腸から大量に出血し,収縮期血圧が60 mmHgまで低下したため,緊急手術を行った.

第2回目手術:腹腔内の高度な炎症や癒着は認めなかったため再建は可能であると判断し,残存大腸切除,IACAを行った(Fig. 2b).また,肛門管に深い潰瘍が残存しており縫合不全のリスクを考慮し,一時的回腸人工肛門を造設した.

第2回目手術後経過:2回目手術3か月後に吻合部造影を施行し,明らかな縫合不全,深掘れ潰瘍を認めなかったため,4か月後に回腸人工肛門閉鎖術を施行し,回腸囊機能状態となってから5年8か月経過した現在,全身状態も良好で外来通院中である.

症例4:63歳,男性

術前経過:前医受診1か月前に下痢が出現,前医受診後に重症潰瘍性大腸炎と診断され入院となった.ステロイド大量静注療法で改善しなかったため当院に転院となった.入院時の腹部CTで横行結腸の著明な拡張と壁の菲薄化,free airを認め,中毒性巨大結腸症,穿孔性腹膜炎の診断で同日緊急手術を行った.横行結腸穿孔に伴う急性汎発性腹膜炎のため結腸亜全摘,S状結腸粘液瘻造設,回腸人工肛門造設術を行った(Fig. 3a).

Fig. 3 

a, b: Resected specimen of the colon showing hardly any mucosa remaining, especially in left side of the colon, and dilation of the colon because of the thin muscle layer. In the resected rectum, the muscle layer was broadly exposed.

術後経過:術後4日目から少量の粘血便が持続し,粘液瘻から水様性プレドニゾロンの注入を行った.術後11日目に出血が増加したが,出血性ショックには至らなかったため下部消化管内視鏡検査を行った.残存大腸の広範な潰瘍から出血を認め,最も出血の多い潰瘍を同定してclippingで止血した.術後24日目に再度,出血が増加し内視鏡下に数か所clippingしたが止血が不十分なために術後25日目に準緊急手術を行った.

第2回目手術:腹膜炎後で高度の癒着を認め,さらに肝硬変の合併もあったことから再建は行わず,直腸部分切除,Hartmann手術を行った.術中内視鏡を行い,出血点が切除側に含まれることを確認し,腹膜翻転部口側2 cmで残存大腸を切除した.

第2回目手術後経過:再出血なく経過し退院となり,2回目手術から6か月後,残存直腸全摘術,IACAを行った(Fig. 3b).回腸囊機能状態となってから3年11か月経過した現在,全身状態も良好で,外来通院中である.

考察

潰瘍性大腸炎に対する標準術式は大腸全摘術,回腸囊肛門吻合,または回腸囊肛門管吻合である.当科では原則として,潰瘍性大腸炎関連大腸癌,または,high grade dysplasia合併例に対しては大腸粘膜を残さないIAAを,重症例,難治例に対しては患者の希望を確認し,術後排便機能が比較的良好な4)5)IACAを第一選択としている.一般的には両術式は分割手術で行われることが多く,特に低栄養などを含む全身状態不良例,腹腔内感染合併例,ステロイド製剤大量使用例,回腸間膜が伸展不良な例,肛門管に深い潰瘍や痔瘻,膣瘻などの肛門病変を合併した例などで縫合不全の危険性を考慮し,分割手術が第一選択となる.当科では上述のリスクのうち著しい全身状態不良,腹腔内感染,肛門管の深い潰瘍,肛門病変のない症例には一期的IACAを積極的に施行している.分割手術の第1期目に結腸亜全摘が選択された場合,S状結腸粘液瘻造設術,またはHartmann手術が施行され,本邦では前者が行われることが多い.本術式は手術手技が比較的簡便で短時間で施行可能であり,術後比較的早期の全身状態改善が期待でき,全身状態,肛門管病変や腹腔内感染が改善したあとに安全に再建術を行うことができる.一方で症例によっては高度の炎症があるS状結腸と直腸を残すため,残存大腸の潰瘍から出血を生じるリスクがある.

結腸亜全摘術後に残存大腸からの大量出血が生じる頻度は4.5%1)から12%2)と報告され,自験例では重症潰瘍性大腸炎で結腸亜全摘を施行した全症例の4.1%であった.その頻度は,大量出血のために結腸亜全摘術を行った症例で25%と,術前に大量出血を伴わなかった例における2.8%と比べて高率であり,術前から大量出血を伴っていた症例では結腸亜全摘術後に残存大腸から大量出血を来す可能性が高いと考えられた.したがって,第1期目手術の際には,大量出血を伴いS状結腸および直腸の炎症が高度の症例には,可能であれば初めから大腸全摘を行い,IACAあるいはIAAを施行することが望ましいと考えられるが,再建により生じる縫合不全のリスクも考慮して術式を決定する必要がある.1990年から2015年12月の期間を対象に,医学中央雑誌で「潰瘍性大腸炎」,「残存直腸出血」,「大量出血」(会議録含む),PubMedで「ulcerative colitis」,「severe hemorrhage」,「massive hemorrhage」のキーワードで検索した結果,結腸亜全摘術後に残存大腸から大量出血を生じた症例は10例であった1)6)~10).残存大腸出血を生じる時期について記載のあった報告では結腸亜全摘術後6〜7日目で残存大腸出血に対する手術が行われており,自験例の2日から6日目を考え合わせて結腸亜全摘術後は7日までは残存大腸からの出血に留意する必要があると考えられた.また,大量出血に対する治療は5例で残存大腸切除,IACAまたはIAAが行われていた(Table 3).

Table 3  Reported cases of hemorrhage from the residual rectum after subtotal colectomy for ulcerative colitis
Author Year Number of reported cases POD of hemorrhage Procedures for hemorrhage from residual rectum
Pesce6) 1991 3 Unknown Washout of rectum with adrenaline chloride solusion
Yokoyama7) 1998 2 Unknown Per anal suturing
Ikenaga8) 2003 1 7 days Completion proctectomy
Nakano1) 2004 2 Unknown Completion proctectomy, IAA
Mori9) 2005 1 6 days Completion proctectomy, IACA, ileostomy
Banba10) 2007 1 6 days Completion proctectomy, IACA, ileostomy

POD: postoperative days, IACA: ileal pouch anal canal anastomosis

結腸亜全摘術後の残存直腸出血を治療する際には,出血の制御の観点からは残存大腸のうち出血部位を含めて切除することが最も重要であると思われるが,重症例に対する初回手術直後に大量出血し全身状態が不良な症例に対し,侵襲の大きい直腸切除,IA(C)A,回腸人工肛門造設を行うかは総合的に判断すべきである.腹腔内の広範な炎症がある症例では回腸囊が肛門(管)に届かないことや縫合不全のリスクがあり,また,肛門管に深掘れ潰瘍がある症例でも再建術後の縫合不全のリスクがある.一方,経肛門的止血術は止血が得られれば最も低侵襲である.以上をもとに,結腸亜全摘術後の残存大腸出血に対する術式のフローチャートを作成した(Fig. 4).

Fig. 4 

The therapeutic strategy to deal with bleeding from the remnant rectum.

低栄養状態,腹腔内感染,肛門管の深い潰瘍などの縫合不全のリスクが低い症例には残存大腸切除,IACAあるいはIAA,(状況により回腸人工肛門造設術)を行う.縫合不全のリスクが高い場合で,大量出血による出血性ショック状態でなければ術前または術中内視鏡を行う.出血部位が同定可能な場合,下部直腸からの出血であれば内視鏡的止血術あるいは経肛門的縫合止血術を考慮し,上部直腸から口側であれば内視鏡的止血術を試みるか,腹膜翻転部口側で腸管を切離する.この際に腹膜翻転部口側で切離する方が,第2期目手術時に残存直腸断端を同定しやすく,直腸剥離時に直腸を損傷する可能性が少ない11).出血部位の同定が困難,またはびまん性の出血で下部直腸まで切除しなければ出血のコントロールがつかない症例では,第2期目手術時に直腸断端を安全に同定することが困難であるため再建まで行うことを考慮し,残存大腸全摘,回腸囊肛門(管)吻合術,および回腸人工肛門造設術とする.

自験6例では症例ごとに手術時期や術式を決定し,重篤な合併症を生じることなく経過し,最終的に再建術予定の1例を除く5例で自然肛門温存手術が可能であった.しかし,死亡例の報告もあり1),これらの病変に対しては救命を優先して各施設で対応できる適切な処置を選択すべきである.

重症潰瘍性大腸炎に対する結腸亜全摘術後は残存大腸からの出血を念頭に置き,大量出血を生じた場合は時機の遅れなく,出血源を含めた残存大腸切除を中心とした処置を行うことが重要である.

利益相反:なし

文献
 

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
feedback
Top