2020 年 53 巻 10 号 p. 792-799
症例は25歳の男性で,急激に発症した腹痛および腰痛を主訴に当科受診となった.血液検査ではWBC 19,200/μl,CRP 1.91 mg/dlと炎症反応の上昇を認め,また腹部CTおよび腹部MRIにて後腹膜腔に巨大な囊胞性病変を指摘された.抗生剤投与にて症状および血液検査所見は速やかに軽快したために,待機的に開腹下後腹膜腫瘍摘出術を施行した.腫瘍径は10×15×7 cmで後腹膜腔に存在し,下腸間膜動脈および十二指腸水平脚と強固に癒着していた.病理組織診断の結果では異形細胞を認めず,免疫染色検査にて囊胞壁に沿ってcalretinin,mesothelin,D2-40陽性細胞が認められ,Ki-67陽性細胞はほとんど認められず,良性多囊胞性腹膜中皮腫と診断した.今回,我々は急性腹症で発見された後腹膜原発良性多囊胞性腹膜中皮腫の1例を経験したので報告する.