日本消化器外科学会雑誌
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臨床経験
当科における肝囊胞に対する腹腔鏡下開窓術施行症例の検討
吉村 雪野多賀谷 信美鈴木 淳平中野 悠平長谷川 弥子鈴木 淳一松下 公治新井 俊文畑中 正行黒崎 哲也
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2020 年 53 巻 10 号 p. 826-834

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抄録

目的:有症状の肝囊胞に対する腹腔鏡下開窓術でのドレーン非留置および術後早期退院を実現させるための因子について検討した.方法:最近の9年間に当科で開窓術を施行した44例を対象とした.男女比は10:34と女性に多く,平均年齢は65歳であった.囊胞は右葉に存在するものが多く,最大径は平均15.9 cmであった.結果:多囊胞性肝疾患に対し開窓術を行った12例は,全例Gigot分類I型であった.術前に内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(endoscopic nasobiliary drainage;ENBD)チューブを留置した症例は11例で,術中に胆汁漏を5例に認めたが,術後胆汁漏は認めなかった.手術時間は平均122分であった.術後腹水貯留は導入当初の2例に認められたのみで,2018年に行った10例は全例ドレーンの留置はせず,術後2日で退院していた.結語:肝囊胞に対する腹腔鏡下開窓術での囊胞壁切離端と内腔面の胆汁漏の確実な処理ができれば,ドレーン非留置でも周術期合併症を回避し,術後早期退院を可能にした.

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