日本消化器外科学会雑誌
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編集後記
編集後記
山下 継史
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2020 年 53 巻 11 号 p. en11-

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11月となり私の住む横浜の公園は落ち葉に埋もれ,木々から見る空も広くなったような気がしております.冬の到来を知らせる青くて広い空が見渡せる一方で,わずかに日向にはまだ温かさが残る日があり,夏の終焉から秋への確実な移行を感じる今日この頃です.思い起こせば,昨年の秋には全く今とは異なる世界がありました.いつもと同じ秋から冬への移行に定例の行事.そう,師走と呼ばれる一年でも最も繁忙な季節を前に仕事に追われて日常を楽しんでいた生活がありました.それが一変したのが本年2月に始まった新型コロナウイルスの流行と自粛でした.得体のしれない微生物の流行が人間の意志とは無関係に拡大し手の打ちようがないpandemicを引き起こしました.映画の中でしか経験したことのなかったこのような状況の中,人々は社会生活を犠牲にして対応しましたが,事態は収束を迎えるどころか予想通りの悪化をたどり気が付いてみるとすっかり世界が変貌してしまいました.

夏の学会は軒並み延期となり,師走に予定がずれこんでいる先生方も多くいらっしゃると思いますが,いまだに大きな影響を引きずっているといえます.学会のほとんどがWeb開催となり,発表を録音して事前に準備するという新しい標準形式が登場してきました.一方,発表はしたが今までのような充実感がもてない.メッセージが伝わっているかどうかわからない.など未経験の体感が重なり不安定な学術活動を余儀なくされ自信が持てません.学問の進歩も遅延し世の中が止まってしまいました.

そんな中,日本消化器外科学会雑誌ではこれまでと変わらない質の高い論文が今月も刊行されます.第53巻11号の掲載論文は,症例報告8編でした.第74回日本消化器外科学会総会特別企画「オペレコを極める」の原稿2編も掲載されています.いずれも興味深い内容のものばかりで,著者と編集委員とにより手塩にかけてブラッシュアップされました.今月の一押し論文には,小原有一朗先生の「ΔNp63(p40)の免疫染色検査を用いた膵腺扁平上皮癌3切除例の検討」を選ばせていただきました.膵腺扁平上皮癌は膵癌全体の約1%に認められる予後不良でまれな病態でありますが,ΔNp63(p40)抗体を用いることで扁平上皮成分の診断がより明瞭になったとの報告です.扁平上皮癌のマーカーとして臨床現場で目にするようになったΔNp63(p40)ですが,これまでは肺癌や食道癌の組織型鑑別などに用いられておりました.今回の報告では,腺扁平上皮癌という同一の特殊組織系における扁平上皮成分においても,腺癌成分とは明瞭に区別されて染色されたことが確認されその有用性を報告しています.いくつもvariantがあるp63遺伝子の説明なども含んでおり教育効果の高い内容となっています.ぜひ,ご一読ください.

 

(山下 継史)

2020年11月1日

 

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