2021 年 54 巻 10 号 p. 679-688
症例は72歳の男性で,食道胃接合部神経内分泌細胞癌,cT1b-SM1,N0,M0,cStage Iの臨床診断でESDを施行した.Mixed adenoneuroendocrine carcinoma,pT1b-SM2,ly(+),v(+),pHM0,pVM0の病理診断で追加切除を要した.切除標本で胃粘膜下層~漿膜下層内にリンパ管侵襲主体の散在性腫瘍胞巣を認め,ESD-pT3,pN1,pM0,ESD-pStage IIIの病理診断となった.補助療法としてVP-16+CDDPを行うも術後4か月で肝転移再発を来した.CPT-11+CDDPを導入するも不耐で中止,肝動脈化学塞栓療法を行うも効果判定はPDで,併発した肺炎により他病死した.食道神経内分泌細胞癌は早期から局所進行やリンパ節転移を来しやすく,内視鏡的切除の適応は慎重な判断が必要と考えられる.