2021 年 54 巻 3 号 p. 217-227
症例は28歳の男性で,運動後に腹痛と意識障害が生じたため救急搬送された.血圧は77/49 mmHgに低下しており右上腹部は著明に膨隆し圧痛を伴っていた.CT所見ではモリソン窩の位置に直径18 cmに及ぶ巨大な血腫を認め内部には最大径10 cmの腫瘍の増生を認めた.副腎ホルモン検索では有意な上昇はなく画像検査では腫瘍の肝浸潤,下大静脈浸潤を認め術前診断は非機能性副腎癌と診断した.肝右葉,下大静脈,右腎を合併切除する腫瘍摘出術を施行し,腫瘍は完全切除しえた.摘出標本の免疫染色検査においてcytokeratin,desmin,S100が陰性でCD99が陽性であることから骨外性Ewing肉腫/primitive neuroectodermal tumorの疑いとなり,fluorescene in situ hybridization(FISH)検査でEWSR1とFLI-1のキメラ遺伝子を認め診断が確定した.術後は高次機能施設に紹介し補助化学療法を施行したが術後4年1か月後に局所再発を来した.放射線療法,化学療法を施行したが術後5年6か月目に永眠された.集学的治療により長期予後が得られた本症例について報告する.