日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
パネート細胞胃癌の1例
辰巳 嘉章酒井 哲也伊藤 敬阿見 勝也田中 正樹森本 大樹竹長 真紀岩谷 慶照福岡 正人橘 史朗
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2021 年 54 巻 8 号 p. 514-522

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抄録

症例は76歳の女性で,嘔気,食欲不振および上腹部腫瘤を主訴に当院を紹介受診した.内視鏡検査でヘリコバクター・ピロリ陽性多発性胃潰瘍と診断し投薬治療を施行したが,治療後の内視鏡検査で4型進行胃癌,特殊型,その他の癌(miscellaneous carcinoma)と診断した.さらに,抗リゾチーム抗体免疫染色検査(以下,リゾチーム染色と略記)を含めた各種免疫染色検査によりWHO分類におけるパネート細胞胃癌と診断し,幽門側胃切除術を施行した.術後22か月経過したが,明らかな再発を認めていない.パネート細胞は,腸上皮化生の結果として胃に出現しうる.文献検索上,癌化の過程で胃癌組織の中にパネート細胞様のリゾチーム染色陽性顆粒を含む細胞が散見されるという報告はあるが,本症例のように同顆粒を細胞質に含んだ小型の腫瘍細胞がびまん性浸潤性に増殖するとされるパネート細胞胃癌は極めてまれであった.

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