日本消化器外科学会雑誌
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54 巻, 8 号
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症例報告
  • 笠原 康平, 小坂 隆司, 佐藤 渉, 田中 優作, 宮本 洋, 佐藤 圭, 石部 敦士, 秋山 浩利, 國崎 主税, 宇髙 直子, 藤井 ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 8 号 p. 505-513
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/08/31
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    症例は43歳の男性で,めまいを主訴に近医を受診した.Hb 4.7 g/dlと貧血を認め,上部消化管内視鏡検査で胃体上部に潰瘍出血を伴う粘膜下腫瘤を認めた.組織検査で胃gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)と診断され,加療目的に当科へ紹介された.腹部造影CTで胃壁外に伸展する長径11 cm大の腫瘍と,左胃静脈から脾静脈,門脈本幹に連続する塞栓像を認め,FDG-PET/CTで主病巣にSUVmax 9.9,門脈内にSUVmax 5.6の集積亢進を認めた.門脈内腫瘍塞栓を伴う胃GISTの診断で,胃全摘,膵体尾部切除,脾臓摘出,門脈腫瘍塞栓摘出術を施行した.病理組織学的検査で主病巣,腫瘍塞栓ともに紡錘形細胞の錯綜配列を認め,c-kit,DOG1,CD34が陽性,S-100が陰性であった.門脈血栓に対して溶解治療を行い術後38日目に軽快退院した.外来でイマチニブによる分子標的治療を開始し,術後1年経過して再発なく通院を継続している.

  • 辰巳 嘉章, 酒井 哲也, 伊藤 敬, 阿見 勝也, 田中 正樹, 森本 大樹, 竹長 真紀, 岩谷 慶照, 福岡 正人, 橘 史朗
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 8 号 p. 514-522
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/08/31
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    症例は76歳の女性で,嘔気,食欲不振および上腹部腫瘤を主訴に当院を紹介受診した.内視鏡検査でヘリコバクター・ピロリ陽性多発性胃潰瘍と診断し投薬治療を施行したが,治療後の内視鏡検査で4型進行胃癌,特殊型,その他の癌(miscellaneous carcinoma)と診断した.さらに,抗リゾチーム抗体免疫染色検査(以下,リゾチーム染色と略記)を含めた各種免疫染色検査によりWHO分類におけるパネート細胞胃癌と診断し,幽門側胃切除術を施行した.術後22か月経過したが,明らかな再発を認めていない.パネート細胞は,腸上皮化生の結果として胃に出現しうる.文献検索上,癌化の過程で胃癌組織の中にパネート細胞様のリゾチーム染色陽性顆粒を含む細胞が散見されるという報告はあるが,本症例のように同顆粒を細胞質に含んだ小型の腫瘍細胞がびまん性浸潤性に増殖するとされるパネート細胞胃癌は極めてまれであった.

  • 春名 孝洋, 横山 正, 丸山 弘, 平方 敦史, 上田 純志, 高田 英志, 高野 竜太朗, 川島 万平, 牧野 浩司, 吉田 寛
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 8 号 p. 523-530
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/08/31
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    症例は85歳の女性で,局所進行膵頭部癌(上腸間膜動脈,門脈浸潤)に対し,化学放射線療法後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,門脈合併切除再建術を施行した.術後経過は良好であったが3か月目に下血と貧血を認めた.CTで肝外門脈閉塞(extrahepatic portal vein obstruction;以下,EHOと略記)と肝管空腸吻合部周囲に増生した側副血行路を認めた.ダブルバルーン小腸内視鏡検査で静脈瘤を肝管空腸吻合部に認め,同部からの出血と診断した.門脈圧減圧による出血予防を目的に部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization;以下,PSEと略記)を施行した.その後は出血を認めていない.EHOにより生じる異所性静脈瘤出血は診断・治療の困難な致命的な合併症であるが治療法は確立していない.PSEは肝管空腸吻合部静脈瘤出血に対し一考すべき治療法である.

  • 池永 直樹, 井上 彬, 小森 孝通, 西沢 佑次郎, 小松 久晃, 宮﨑 安弘, 友國 晃, 本告 正明, 伏見 博彰, 岩瀬 和裕, 藤 ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 8 号 p. 531-537
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/08/31
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    症例は68歳の男性で,下部直腸癌に対して腹腔鏡下超低位前方切除,両側側方リンパ節郭清術を施行された.最終病理組織診断はpT2N0M0,pStage Iであった.術後に麻痺性イレウスを認めたが,保存的加療により軽快退院となった.術後3か月目に,右鼠径部痛を自覚し当院を救急受診した.腹部造影CTにて,骨盤内右側で小腸がclosed loopを形成し,絞扼性腸閉塞の診断で緊急手術を施行した.術中所見では側方リンパ節郭清によって露出された右上膀胱動脈と内腸骨動脈の間隙に小腸が迷入し陥頓/壊死していたが,容易に陥頓解除できた.左上膀胱,右下膀胱動脈が温存されていることを確認し,再発予防目的に右上膀胱動脈を結紮切離し,壊死腸管を含めた小腸部分切除を行い吻合再建した.病理組織診断では腸管壁全層が壊死していた.直腸癌に対し側方リンパ節郭清後の露出血管が原因となった絞扼性腸閉塞の1例を経験したので報告する.

  • 松宮 美沙希, 小泉 大, 笠原 尚哉, 遠藤 和洋, 笹沼 英紀, 佐久間 康成, 堀江 久永, 細谷 好則, 北山 丈二, 佐田 尚宏
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 8 号 p. 538-547
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/08/31
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    症例は48歳の男性で,約1か月前に左手外傷に対して鼠径部より採皮,植皮術を施行され,退院後より腹部違和感を自覚していた.腹部症状が増悪し意識障害も出現したため前医を受診し,造影CTで広範な門脈血栓症を認め,入院となった.翌日,下部消化管出血を認め,当院転院となった.転院時造影CTで上腸間膜静脈血栓症と診断された.小腸壊死は明らかでなく,抗凝固療法を開始し,約40日の経過で血栓はほぼ消失した.経口摂取開始後に嘔吐が出現したため,小腸造影および小腸3D-CTを撮影したところ上部空腸の器質的狭窄を認めた.転院後第59病日に小腸部分切除術を施行した.病理学的には血栓形成を伴う虚血性腸炎の診断であった.術後20日目に退院し,現在も再発は認めていない.本症例では,3D-CTが遅発性小腸狭窄の範囲の推定と切除範囲の決定に有用であった.

  • 土屋 康紀, 大村 哲也, 太田 長義, 北條 荘三, 松井 恒志, 吉岡 伊作, 奧村 知之, 長田 拓哉, 島多 勝夫, 岡田 英吉, ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 8 号 p. 548-555
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/08/31
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    症例は75歳の女性で,子宮筋腫手術の既往がある.S状結腸癌に対して腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.術後5か月目より便秘,肛門部違和感,肛門からの透明な排液を自覚した.CTや下部消化管内視鏡検査で前回手術の吻合部より肛門側直腸の虚血性腸炎が疑われた.入院加療として絶食管理などの保存的加療を行うも,症状や腹部CT所見に改善傾向を認めなかった.発症から1か月後に大量下血・ショックとなり緊急手術となった.腸管,腸間膜,周囲組織の高度な腫脹・線維化を認め腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織学的検査にて静脈うっ滞による虚血性腸炎と診断された.2回にわたる骨盤内手術が誘因であったと推測された.

  • 水野 翔大, 清島 亮, 岡林 剛史, 鶴田 雅士, 茂田 浩平, 北川 雄光
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 8 号 p. 556-562
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/08/31
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    症例は24歳の女性で,左側腹部痛を主訴に救急外来を受診した.両側内頸動脈解離,両側椎骨動脈解離の既往があり,受診8か月前に血管型Ehlers-Danlos症候群(Ehlers-Danlos syndrome;以下,EDSと略記)と診断されていた.受診時の腹部造影CTで結腸脾彎曲部の腸管壁内気腫および近傍の腹腔内にfree airを認め,下部消化管穿孔が疑われた.圧痛部位が限局しており汎発性腹膜炎の所見がなかったこと,また,血管型EDS患者の手術に伴うリスクを考慮して,保存的治療を行う方針とした.入院後,炎症反応と腹部症状の改善を認め,第29病日に軽快退院となった.消化管穿孔に対する治療は手術が基本とされているが,創傷治癒遅延により重大な術後合併症を起こす場合が多く慎重な治療方針決定が望まれる.本症例のように来院時に血管型EDSと診断されている場合には,症状が軽度で全身状態が保たれていれば保存的治療も選択肢の一つとなることが示唆された.

  • 添田 敏寛, 内藤 広郎, 秋重 尚貴, 土屋 尭裕, 中山 瞬, 嶋 健太郎, 上野 達也, 後藤 慎二, 高橋 道長, 大藤 高志
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 8 号 p. 563-570
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/08/31
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    症例は63歳の女性で,食思不振と左側腹部痛に起因する体調不良により救急外来を受診した.血液検査で白血球(76,900/mm3)と著明な増多を認めた.腹部造影CTと下部消化管内視鏡検査で横行結腸癌と診断,感染症や血液疾患は否定的でありgranulocyte-colony stimulating factor(以下,G-CSFと略記)産生腫瘍を疑い血清G-CSF値を検索したところ340 pg/mlと高値であった.左結腸切除,膵体尾部合併切除,回腸瘻造設術を施行した.腫瘍細胞は抗G-CSF抗体を用いた免疫組織化学染色で陽性を示した.術後血清G-CSF値,白血球は著明に減少したので,G-CSF産生横行結腸癌と診断した.術後21日目より白血球数の再上昇がみられ,肝S7に転移を認めた.全身化学療法を継続したが術後14か月で死亡した.G-CSF産生大腸癌は極めてまれであるが予後不良であることから報告する.

  • 稲本 道, 久徳 茂雄, 岡田 和幸, 宮内 雄也, 髙木 秀和, 宇山 直樹, 小切 匡史, 鍛 利幸
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 8 号 p. 571-578
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/08/31
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    症例は64歳の女性で,下部直腸の神経内分泌腫瘍に対して内視鏡的切除が施行されたが,組織学的に垂直断端陽性と脈管侵襲を認め,追加切除として腹腔鏡下括約筋間直腸切除術(回腸人工肛門造設を併施)を施行した.術後3か月目,回腸人工肛門閉鎖に際しての直腸造影検査で膣が造影され,直腸膣瘻と診断した.可及的に腰椎麻酔下に瘻孔の単純縫合閉鎖術を行ったが,直腸膣瘻の再発を認めた.膣瘻の根治を目的として,初回手術後7か月目に内陰部動脈穿通枝皮弁充填術を施行した.術後経過良好にて術後9日目に退院となった.皮弁充填術後6か月目に回腸人工肛門を閉鎖し,術後16か月時点で腫瘍・瘻孔の再発を認めていない.直腸切除後の膣瘻に対してはさまざまな治療の報告があるが,内陰部動脈穿通枝皮弁充填術の報告は比較的少ない.今回,我々は内陰部動脈穿通枝皮弁充填術により括約筋間直腸切除後の直腸膣瘻を根治しえた1例を経験したので報告する.

編集後記
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