2022 年 55 巻 1 号 p. nm1-nm4
毎年恒例の会誌編集委員会からの年頭のご挨拶及び,本誌の現況についてご報告させていただきたいと思います.
Covid-19感染拡大のなか,世の中ではWEB環境下のコミュニケーションが急速に拡大しておりますが,当委員会ではこれに先駆けて,2014年からWebEx,2019年よりZoomを使った会議を開始しており,現在もスムーズに毎月行われる編集委員会が運営されています.
昨年,上部より1人,能城浩和先生,下部より3人,絹笠祐介先生,竹政伊知朗先生,黒柳洋弥先生,病理より1人,九嶋亮治先生,合計5人の先生が任期満了となり,退任されました.長い任期の間,熱心にご指導と編集委員会への出席,ありがとうございました.そして,新しく,沖 英次先生,渡邉 純先生,石原聡一郎先生(下部),吉川幸造先生(消化器一般),牛久哲男先生(病理)の5名の先生方にご就任いただきました.(表1).今後も末永くよろしくお願いしたいと思います.
委員長 | 比企 直樹 | |||
委員 | 秋吉 高志 | 石原聡一郎 | 市川 大輔 | 上野 秀樹 |
江口 晋 | 遠藤 格 | 大塚 将之 | 沖 英次 | |
窪田 健 | 黒川 幸典 | 小林 宏寿 | 齋浦 明夫 | |
里井 壯平 | 塩崎 敦 | 大幸 宏幸 | 瀧口 修司 | |
竹内 裕也 | 廣野 誠子 | 藤井 努 | 丸橋 繁 | |
水島 恒和 | 本山 悟 | 山下 継史 | 山本聖一郎 | |
吉川 幸造 | 渡邉 純 | |||
牛久 哲男(病理学) | 全 陽(病理学) | |||
伴 慎一(病理学) | 森田 智視(統計学) | |||
編集幹事 | 新原 正大 | 細田 桂 |
本誌の採用論文数の年次推移を,表2に示します.投稿論文数は10年間で緩やかに減少しておりましたが,昨年より増加しており,全体的に挽回しているように思います.2021年(54巻)の掲載論文数は合計で109編であり,昨年の2020年(53巻)の95編より増加しました(表3).一方,採用率は2019年度の57.5%に対して,2020年度では43.2%と厳しくなっており,投稿数の相対的増加が原因と考えます.
年度(5月から翌年4月まで) | 論文投稿数 | 採用率 | 不採用率 |
---|---|---|---|
2009年度 | 485 | 35.9% | 42.9% |
2010年度 | 443 | 29.8% | 47.6% |
2011年度 | 353 | 23.2% | 54.1% |
2012年度 | 319 | 23.5% | 52.4% |
2013年度 | 275 | 17.8% | 42.6% |
2014年度 | 240 | 18.3% | 24.6% |
2015年度 | 223 | 27.8% | 32.3% |
2016年度 | 251 | 20.3% | 27.9% |
2017年度 | 183 | 36.6% | 49.2% |
2018年度 | 176 | 39.2% | 44.3% |
2019年度 | 167 | 57.5% | 30.5% |
2020年度 | 199 | 43.2% | 40.2% |
※採用,不採用以外は,査読中となっているものです.
年 | 原著 | 総説 | 症例報告 | 臨床経験 | 研究速報 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2009年(42巻) | 22 | 0 | 176 | 5 | 1 | 204 |
2010年(43巻) | 17 | 2 | 175 | 9 | 0 | 203 |
2011年(44巻) | 23 | 0 | 191 | 13 | 0 | 227 |
2012年(45巻) | 7 | 0 | 150 | 3 | 0 | 160 |
2013年(46巻) | 7 | 0 | 110 | 6 | 1 | 124 |
2014年(47巻) | 10 | 0 | 98 | 0 | 0 | 108 |
2015年(48巻) | 10 | 0 | 120 | 4 | 0 | 134 |
2016年(49巻) | 18 | 0 | 138 | 3 | 0 | 159 |
2017年(50巻) | 10 | 1 | 112 | 1 | 0 | 124 |
2018年(51巻) | 5 | 0 | 92 | 3 | 0 | 100 |
2019年(52巻) | 9 | 0 | 76 | 3 | 0 | 88 |
2020年(53巻) | 6 | 1 | 86 | 2 | 0 | 95 |
2021年(54巻) | 11 | 0 | 95 | 3 | 0 | 109 |
※一般投稿論文の掲載数.Editorial,Letter to the editor,特別寄稿,特別報告などは除く.
本誌の全文PDF+HTMLへのアクセス数は,アクセス数の増加で2019年12月集計の515,246件に対して,2020年12月では628,498件と明らかに増加しており,完全WEB化が成功したと言えます.(前年度:545,116件,全前年度:547,079件,前々々年度:550,753件)であり,4年連続年間50万アクセスを超え,また,初めて60万アクセスを達成しました.
本誌は1969年に村上忠重先生を初代委員長として創刊されました(表4).編集委員長の任期は第2代の鍋谷欣市先生の14年間が最長となりますが,近年では3~5年のことが多く,第6代の桑野博行先生,第7代の遠藤格先生は6年間務められました.以前は印刷した原稿を風呂敷包みで編集委員会に持参されていたと伺っております.2010年には事務局が茅場町から新富町へ,2017年に新富町より三田に移転し,オンライン投稿・査読システムを導入,予稿集を電子化し,サイトからPDFをダウンロードして査読するスタイルに移行し,現在のWeb会議のスタイルになりました.2019年には優秀論文賞の新設,Similarity Checkを導入,Web会議システムの刷新を行いました.2020年は特別報告「オペレコを極める」の通年掲載,Editorial Kickの導入などの試みを行った年でもございました.2021年は特別報告「私の工夫」「ビデオ報告」の企画・検討を行った年でもございました.大変良い企画であると自負しており,第一報が投稿され,査読中であります.また,本誌の歴史を作られてきた先輩諸兄に心から感謝の意を表したいと思います.
1968年 | 日本消化器外科学会発足. |
1969年 | 初代委員長 村上 忠重,日本消化器外科学会雑誌第1巻第1号発行. |
1970年 | 事務所移転(横浜市立大学第二外科→東京女子医科大学消化器病センター) |
1976年 | 日本医学会加盟. |
1979年 | 担当理事 長尾 房大,第二代委員長 鍋谷 欣市 |
1982年 | 事務所移転(九段南) |
1987年 | 担当理事 杉浦 光雄 |
1988年 | 担当理事 岩崎 洋治 |
1989年 | 英文要旨を追加. |
1991年 | 担当理事 大原 毅 |
1993年 | 担当理事 鈴木 博孝,第三代委員長 大原 毅,誓約書を追加. |
1995年 | 論文種目「臨床経験」を追加. |
1997年 | 表紙をデザイン化,編集後記の掲載を開始. |
1998年 | 担当理事 嶋田 紘,第四代委員長 佐治 重豊,著者名を10名以内に限定,入会免除依頼の受け付けを開始(病理医などの他科を想定). |
2000年 | 論文種目「総説」を追加,査読希望領域欄を追加,学会公式サイトを公開. |
2001年 | 第五代委員長 上西 紀夫,査読体制変更(臓器別),Digestive Surgeryを公式英文誌化. |
2002年 | データ添付投稿の受け付けを開始(FD,MO,CD). |
2004年 | 学会独自のオンライン・ジャーナルサイトを公開. |
2006年 | 事務所移転(茅場町),理事長制導入. |
2007年 | 担当理事 安藤 暢敏,第六代委員長 桑野 博行,文献検索期間の明示を義務化,平成19年度電子アーカイブ対象誌に選定(Journal@rchive),会誌編集委員会からの公示を掲載開始. |
2010年 | 事務所移転(新富),オンライン投稿・査読システムを導入,予稿集を電子化. |
2011年 | J-STAGEへ移行,会誌完全電子化,メールマガジン配信開始,CrossRef利用開始(DOI付加),委員会の体制を強化(統計学の委員,English language editor). |
2012年 | 担当理事 渡邊 昌彦,Top publications in Japanese和文ジャーナル上位100誌にて8位(Google Scholar Metricsより),J-STAGE 3公開,全文HTML公開,論文種目「特別報告」を追加,「日本消化器外科学会雑誌 英文作成上の注意(監修:東京医科大学国際医学情報学講座)」「日本消化器外科学会雑誌 用字用語について(公用文作成の要領などを基に作成)」を公開,投稿時の動画資料への対応を開始. |
2013年 | 第七代委員長 遠藤 格,委員を増員,学術情報XML推進協議会に加盟,DOIの付番ルール変更(早期公開機能への対応),和文の索引用語を追加,動画資料を含む記事を掲載,特別報告(NCD Annual report)・特別寄稿(英語による教育コンテンツ)を掲載,抄録・引用文献データベース「Scopus」の収載状態を整理. |
2014年 | NLMのElectronic linkを修正,Web会議システムを導入,J-STAGEの改善によりGoogle Scholarとの連携を強化. |
2015年 | 特別報告(医療安全委員会)を掲載,J-STAGE利用者アンケートに協力,投稿規程を改正(著者数制限の変更,貢献度の申告,連絡責任者及び保証者の明示,用字用語についての変更(日本医学会 医学用語辞典に準拠),図表枚数制限の緩和,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-ND(表示-非営利-改変禁止))の導入. |
2016年 | 投稿規程を改正(ギフトオーサーの追加の抑止,倫理審査番号の原則明示,英文要旨と英文の索引用語情報は採用後の提示に,チェックリスト・原稿テンプレートを開示),メールマガジンへの会告・広告掲載開始,メールマガジンのデザインを更改(モバイルファースト) |
2017年 | 事務所移転(三田),J-STAGEにてGraphical Abstractを表示開始,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC(表示-非営利))へ変更,J-STAGE刷新. |
2018年 | 学会創立50周年,J-STAGE利用者アンケートに協力,J-STAGEの論文閲覧性向上によるアクセス数の大幅増加を記録. |
2019年 | 担当理事 遠藤 格,第八代委員長 比企 直樹,優秀論文賞の新設,Similarity Checkを導入,Web会議システムを刷新,J-STAGE編集委員会名簿を公開. |
2020年 | 特別報告「オペレコを極める」通年掲載 |
2021年 | 特別報告「私の工夫」「ビデオ報告」の企画・検討,執筆依頼開始 |
研究倫理問題に関しては毎年掲載しておりますが,注意喚起という目的で再掲させていただきます.まずJDDWの倫理指針が改訂されました.人を対象とする臨床研究では,自施設のIRB(Institutional Review Board)を通過し,前向き臨床試験では公的機関(UMIN臨床試験登録システム,日本医師会治験促進センター「臨床試験登録システム」,日本医薬情報センターなど)に登録することが求められます.侵襲(軽微な侵襲を除く)・介入を伴う研究について,研究責任者に対し,モニタリングや第三者的な立場の者による監査の実施が新たに義務付けされます.9例以下をまとめた研究性のない症例報告は倫理審査が不要なようです.10例以上をまとめた症例報告は症例集積研究とみなされ,倫理審査委員会の審査が必要です.最近問題となることの多い多重投稿については,Similarity Checkを導入することで,スクリーニングをする方針となりました.
他論文と40%以上の重複があった場合は委員会で検討し,剽窃や二重投稿の可能性がないかを慎重に審議します.これらから剽窃が疑われた場合は1)筆者および指導者に厳重注意を書面で促し,2)筆者をブラックリストとしてリストアップし,3)剽窃が疑われた論文の投稿があった事実を本誌の読者に周知することで,今後の悪意のある投稿の予防に努めています.
以下,2022年の所信表明を述べさせていただきたいと思います.
「より教育的な査読」を著者に提供する
本誌の基本編集方針である「和文誌の最高峰を維持する」と「若手消化器外科医の登竜門」は今後も守り続けていく所存であります.
一方,「日本消化器外科学会雑誌は投稿するにも敷居が高い」,「厳しすぎる査読に閉口した」などの声がありましたが,新しい編集委員会の方針として,「新奇性の欠如」のみでのリジェクトを廃止し,読者がその論文を読んだときに,自身の臨床活動に有意義だったり,教育意義が高かったりすることを重視して裁定を行うことが浸透し,査読委員の先生方は「より教育的な査読」を心がけて下さるようになりました.この方針が投稿者側にも伝わったのか,投稿数が増しました.一方では採用率は低下し,難易度は高いが,投稿が増えるという大変素晴らしい傾向となっております.委員の先生方には,どれだけ時間をかけて査読に当たって下さっているかと思うと,頭が下がります.
昨年はより魅力的な雑誌を目指し,特別報告「私の工夫」「ビデオ報告」の企画・検討を行いました.早速,第一報の投稿があり,現在査読プロセス中でございます.
以上,2022年の日本消化器外科学会会誌編集委員会の基本姿勢,改革案などについて記しました.本誌の歴史と伝統を重んじつつ,新たなる雑誌への改革も考えつつ,「和文誌の最高峰」として,いつまでも輝く雑誌であるように委員一同精励してまいります.
(文責:日本消化器外科学会会誌編集委員会委員長 比企直樹)
(2022年1月)