日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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55 巻, 1 号
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会告
原著
  • 上畑 恭平, 長久 吉雄, 外川 雄輝, 武藤 純, 橋田 和樹, 横田 満, 山口 和盛, 岡部 道雄, 北川 裕久, 河本 和幸
    原稿種別: 原著
    2022 年 55 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/01/28
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    目的:閉鎖孔ヘルニア嵌頓は緊急手術を要することが多く,死亡率が高い予後不良な病態である.我々は,同病態に対する非観血的整復手技Four hand Reduction for incarcerated Obturator hernia under Guidance of Sonography(以下,FROGSと略記)を考案したので,手技の実際を報告する.方法:〈STEP 1〉超音波でヘルニア先進部を確認する.〈STEP 2〉助手は下肢を外転,屈曲,外旋位と内転,伸展,内旋位とを繰り返すようにゆっくり動かす.〈STEP 3〉術者は超音波で脱出腸管を視認しながら先進部を用手的に圧迫する.2016年4月から2020年9月までに36例の閉鎖孔ヘルニア嵌頓を経験し,2019年11月よりFROGSを導入した.導入後(After群;以下,A群と略記)と導入前(Before群;以下,B群と略記)において整復成功率,腸切除の有無,合併症,死亡率,入院期間について後方視的に検討した.結果:A群13例,B群23例であり,患者背景に差はなかった.還納成功はA群は全例(100%),B群は1例(4.3%)であった(P<0.001).腸切除を要した例はA群で有意に少なく(P=0.03),合併症,死亡,入院期間はA群で少ない傾向であった.結語:FROGSは簡便で再現性が高い有用な徒手整復術であると考えられた.

症例報告
  • 今村 沙弓, 西川 和宏, 浜川 卓也, 小林 雄太, 三代 雅明, 高橋 佑典, 三宅 正和, 宮本 敦史, 加藤 健志, 森 清, 平尾 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/01/28
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    症例は69歳の女性で,1か月前から嚥下時違和感を自覚し,左頸部の圧痛,嗄声も認めていた.精査で食道左側に憩室を認め,有症状の食道憩室として頸部外切開による食道憩室切除術を施行した.術中に内視鏡とバルーンを併用することで食道と憩室の位置関係を把握しKillian-Jamieson憩室との診断に至った.切除後もバルーンを用いて食道内腔の狭窄がないことを確認しながら筋層縫合を行った.その後も嚥下機能障害,食道狭窄,憩室の再発なく現在まで経過している.Killian-Jamieson憩室はまれな食道憩室であり,多くは無症候性であるが,時に嚥下困難や逆流症状を来し手術加療が考慮される.Killian-Jamieson憩室はZenker憩室と比較して解剖学的に反回神経に近い場所から発生し,また憩室の発生機序に輪状咽頭筋が関与しないと考えられているため,両者を正しく鑑別することが重要である.我々が用いた食道憩室手術における術中内視鏡でのバルーン併用は憩室の診断と手術時の合併症防止に有用である可能性が示唆された.

  • 材木 良輔, 谷口 礼, 橋本 聖史, 武居 亮平, 青木 斐子, 寺川 裕史, 東 勇気, 寺田 逸郎, 月岡 雄治, 桐山 正人
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/01/28
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    症例は32歳の女性で,腹痛,嘔吐を主訴に当院を受診した.外傷歴はなく,6か月前に横隔膜ヘルニアと診断されたが無症状のため経過観察となっていた.4か月前より食後の腹部不快感を自覚するようになり,5 kgの体重減少も認めた.胸腹部CTでは,食道裂孔左側で胃が胸腔内に脱出しており,腹部食道と脱出胃の間に左横隔膜脚を認めたため,横隔膜傍裂孔ヘルニアと診断した.治療は腹腔鏡下にヘルニア内容を還納し,ヘルニア門の直接縫合を行った.横隔膜傍裂孔ヘルニアは食道裂孔近傍の横隔膜にヘルニア門を形成し,ヘルニア門と食道裂孔の間に横隔膜組織が介在しており,傍食道型の食道裂孔へルニアとは異なる疾患である.一般に診断は難しいとされるが,CTによる詳細な観察で診断は可能である,治療には外科的処置が必要であるが,腹腔鏡手術は低侵襲で術視野もよく有用な治療法と考えられたので,報告する.

  • 深田 晃生, 髙橋 剛, 黒川 幸典, 西塔 拓郎, 山本 和義, 中島 清一, 山崎 誠, 清川 博貴, 森井 英一, 江口 英利, 土岐 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/01/28
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    症例は25歳の女性で,検診の腹部超音波検査にて7 cm大の胃腫瘤像を認め,当科紹介となった.上部消化管内視鏡検査にて胃体中部にbridging foldを伴う粘膜下腫瘍,その他2か所に粘膜下腫瘍を認めた.腹部CTで胃壁内外に7 cm大の石灰化を伴う分葉状腫瘤を認めた.PET-CTでは主腫瘍とともに#1リンパ節にFDGの集積を認めた.若年発症胃多発gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)と診断し,D2リンパ節郭清を伴う胃全摘術を施行した.胃腫瘍は全てGISTと診断され,リンパ節転移を確認した.遺伝子検索の結果,野生型であることを確認し,補助化学療法は実施せず経過観察中である.若年発症胃多発GISTは,リンパ節転移を高頻度に認め,分子標的治療薬の感受性が低いなどの報告があり通常のGISTとは異なる治療戦略が必要と考えられ,報告する.

  • 大西 啓祐, 佐井 康真, 浜田 和也, 佐藤 多未笑, 相磯 崇, 高須 直樹, 二瓶 義博, 五十嵐 幸夫, 長谷川 繁生
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/01/28
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    症例は16歳の男性で,3年以上にわたり小児科で嘔吐症として保存的治療を受けていたが改善せず当科に紹介となった.大動脈と上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMAと略記)間のなす角度は13°,距離も5.6 mmと狭小化しておりSMA症候群と判断した.当科でも保存的治療を継続したが,改善が得られずやむをえず外科治療を行う方針となった.さまざまな治療法の報告があるが,若年でもあり整容性と最大限の治療効果を期待して,腹腔鏡下にダブルトラクト法による再建する手術を施行した.吻合は2か所となり手術時間は205分とやや長めながら,完全腹腔鏡視下に施行可能であった.経過は良好で術後10日目に退院となった.当手術法は生理的経路の確保と十二指腸転位術の双方のメリットを生かせると思われ,治療法の選択肢の一つになりうると考えられた.

  • 二宮 瑞樹, 森田 和豊, 黒田 陽介, 深町 由香子, 南 順也, 上田 哲弘, 﨑村 正太郎, 武石 一樹, 井口 友宏, 萱島 寛人, ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/01/28
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    新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2;以下,SARS-CoV-2と略記)陽性胆囊炎患者に対する腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した1例を報告する.症例は56歳の男性で,急性胆囊炎の術前検査にてSARS-CoV-2陽性が判明した.肺炎像はなかった.まず保存的治療を選択したが発症8日目に症状が増悪し,壊疽性胆囊炎への進展と総胆管への落石による閉塞性胆管炎の状態となった.関係各科にて合同カンファレンスを行って感染対策を協議し,情報共有,シミュレーションを行った後に感染力が低下すると考えられる発症11日目に腹腔鏡下胆囊摘出+C-tube留置術を施行した.術中は高性能フィルターを搭載した気腹・排煙装置の使用などのサージカルスモーク対策の他,在室時間も短縮させるように工夫した.治療計画,術前準備,術中感染対策などについて報告する.

  • 百武 佳晃, 吉留 博之, 江藤 亮大郎, 小山 諭, 大塚 将之, 安蒜 聡
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/01/28
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    症例は65歳の男性で,背部痛精査の造影CTで遠位胆管癌を認め,胆汁細胞診にてClass Vであった.幼小児期に複数回の開腹歴と大量腸切除の既往から食事摂取は可能であったが,短腸が推測され,また高尿酸血症・高血圧・高脂血症・慢性腎障害を認めた.短腸症例に膵切除を施行する場合には栄養障害の可能性が考えられることから,Synapse Vincentを用いて残存小腸の長さを測定し手術適応を決定した.手術は亜全胃温存膵頭十二指腸切除を行った.術後は消化吸収の点から中心静脈栄養管理を主体に開始し,成分栄養剤にて腸管機能の改善を確認後に膵酵素剤を併用し食事を開始した.短腸の症例に対する膵頭十二指腸切除は報告がないが,その適応は残存膵機能の面と残存小腸機能の面から慎重に検討することで施行可能であると考えられた.

  • 永野 慎之介, 吉岡 慎一, 植野 望, 橋本 安司, 田村 茂行, 佐々木 洋
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/01/28
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    症例は74歳の男性で,S状結腸憩室穿孔に対して腹腔鏡下Hartmann手術によりS状結腸ストマを造設された.術後,正中創の腹壁瘢痕ヘルニアを認めたが,経過観察していた.9か月後に,S状結腸ストマ閉鎖術を施行したが,術後のCTでストマ閉鎖創の腹壁瘢痕ヘルニアを指摘された.正中創とストマ閉鎖創2か所の腹壁瘢痕ヘルニアをendoscopic mini/less open sublay repair(以下,EMILOS法と略記)にて同時修復した.術後は目立った合併症なく,術後4か月現在,再発なく経過観察中である.腹壁瘢痕ヘルニアに対する手術として,最近では腹腔鏡を用いたヘルニア修復術が行われるようになっており,その有用性に関する報告が散見される.今回,我々は小切開を置き,単孔式腹腔鏡操作を併用したEMILOS法にて腹壁再建術を行えたため,報告する.

臨床経験
  • 中尾 詠一, 小金井 一隆, 辰巳 健志, 二木 了, 黒木 博介, 小原 尚, 杉田 昭
    原稿種別: 臨床経験
    2022 年 55 巻 1 号 p. 64-71
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/01/28
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    当科で手術を行った非中毒性巨大結腸症合併潰瘍性大腸炎7例の特徴や臨床経過を分析した.全例全大腸炎型で,巨大結腸症診断時中央値年齢は51歳であった.巨大結腸症診断前の治療は,6例が5-ASA製剤とステロイド大量静注療法であり,1例は未治療であった.診断後ステロイド継続が3例,インフリキシマブへの変更が3例,未治療の症例はステロイド大量静注療法が開始された.手術適応は穿孔2例,難治4例であった.術後病理組織学的所見で全例に筋層以深に至る潰瘍を認め,難治例の内1例は,術後に被覆穿孔を来していたことが判明した.術後合併症は腹腔内膿瘍3例,正中創SSI 1例,麻痺性イレウス1例,縫合不全1例,肺炎1例,心筋梗塞1例であった.巨大結腸症を合併する症例は症状を伴わない症例でも,その本態は筋層に及ぶ潰瘍が多発した病変であり,中毒性巨大結腸症と同様に穿孔の可能性があるため,手術適応と考えられる.

編集後記
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