2022 年 55 巻 11 号 p. 701-708
症例は74歳の男性で,急速に増加した全身性皮疹からLeser-Trélat(以下,LTと略記)徴候が疑われ,下部消化管内視鏡検査で一部にLST-NG病変を伴う35 mm大の多結節状隆起性病変を上行結腸に認めた.SM浸潤を伴う腺腫内癌と診断され腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.切除標本病理診断では,癌組織は粘膜固有層に限局し,さらに癌は約500 μm径と極めて小範囲のみに認めた.術後皮膚病変が改善した経過,皮膚病変のepidermal growth factor receptor高発現からLT徴候を伴った上行結腸微小粘膜内癌と診断した.LT徴候は内臓悪性腫瘍に随伴するdermadromeの一つであり,約60%は消化器癌に合併する.悪性腫瘍発見時の病期は進行癌が多いとされ,早期大腸癌症例はSM浸潤癌3例のみであった.粘膜内癌症例は報告例がなく,治療経過を報告する.