2022 年 55 巻 6 号 p. 389-398
症例は69歳の男性で,盲腸癌術後の多発肝転移に対し,化学療法施行後に経皮経肝門脈塞栓術,肝切除目的に入院となった.経皮経肝門脈塞栓術後2日目に新型コロナウイルス感染症の院内クラスターが発生し,症例も経皮経肝門脈塞栓術後4日目に発症した.抗ウイルス薬やステロイド,抗凝固療法などを早期より開始したが,呼吸状態が悪化し一時は人工呼吸器導入を検討した.しかし,症状が改善し,発症後4週目で酸素投与終了となった.発症8週後に全身状態の改善を認め,術前評価を再度施行後,拡大肝右葉切除,部分切除,術中マイクロ波焼灼を施行した.術後は呼吸障害や血栓形成,著明な肝障害を認めなかった.新型コロナ感染症流行期において,患者因子や環境因子を考慮しつつ,罹患後の治癒切除可能な患者に機を逸せず手術を行うことが重要であると考えられた.