2022 年 72 巻 1 号 p. 1
2022年1月号の特集は「デジタルレファレンスサービスの未来」です。デジタルレファレンスサービスは,電子メール,チャット,ウェブ等を利用して行われるレファレンスサービスで,様々な形態のものがあります。本誌では,2006年3月に「特集:デジタル・レファレンス・サービス」と題して記事をお届けしました。
以前と今回の大きく異なる点としては,新型コロナウィルス感染症の流行による社会状況の変化があります。社会のあらゆる活動において「対面」で実施する機会が減少し,その代替手段としてインターネットを介した「オンライン」のシステムが利用されるようになりました。対面で直接コミュニケーションを図ることができず,困難が生じることもある反面,時間や距離による問題が解消され,便利になった点も多くあります。そして,対面の活動が再開されてもなお,オンラインの活動を継続する風潮も見られます。
図書館のサービスにおいてはどうでしょうか。来館型のサービスを一時休止した図書館が多くあり,利用者からサービスの再開を待ち望む声もあがりました。そこで,どのようにサービスを継続するかが検討され,オンラインを活用した新たなサービスを実施するケースも見られています。
特に図書館における「レファレンスサービス」では,対面でのレファレンスインタビューが重要である一方,デジタルレファレンスサービスの利用によって,来館に困難があってもサービスの利用機会が得られ,サービス提供の拡張につながることが期待されます。また,頻度が高く即答可能な質問に自動応答することで,効率化も進むものと考えられます。
本特集では,まず小田光宏氏から総論としてデジタルレファレンスサービスの今後を見据える目的で,アナログからデジタルへの転換,接続に関する情報を整理する論考を提供していただきました。小田氏には,2006年の特集の際にも執筆いただいており,その流れを汲みながら現在と未来を考察する内容となっております。
次に,海外でのデジタルレファレンスサービスの事例として,松野南紗恵氏からコロナ禍におけるヴァーチャルレファレンスサービスの動向を,調査結果の事例を交えて解説いただきました。また,渡邊由紀子氏からは大学図書館の事例として,九州大学附属図書館での非来館型のサービスの拡張について解説していただきました。
最後に,齋藤泰則氏からはヴァーチャルレファレンスの展望について,自動化に関する解説と展望を述べていただきました。
デジタルレファレンスサービスは,ある程度の歴史がありこれまでも利用されてきましたが,今回の特集が歴史的流れと今までにないコロナ禍の状況におけるデジタルレファレンスサービスの現状を概観し,さらに今後の展開を考える契機となれば幸いです。
(会誌編集担当委員:長谷川幸代(主査),青野正太,海老澤直美,南雲修司)