日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
左第四指中節骨に転移を来した直腸癌の1例
近藤 里江松田 圭二浅古 謙太郎福島 慶久島田 竜端山 軍野澤 慶次郎三澤 健之佐野 圭二橋口 陽二郎
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2023 年 56 巻 5 号 p. 290-298

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抄録

大腸癌の骨転移のうち,手指骨への転移は非常にまれである.今回,我々は直腸癌術後に手指の疼痛でみつかった左第四指中節骨転移を経験したので報告する.症例は80歳の女性で,血便のため前医で下部内視鏡検査を実施し,直腸RaRSに全周性の2型病変を認めた.生検の結果は腺癌であり,直腸癌の診断で腹腔鏡補助下低位前方切除術と横行結腸人工肛門造設術を施行した.術後5日目に左第四中節骨の腫脹と疼痛を認め,骨折と診断された.固定による保存加療となったが,1か月後に再評価したところ骨折は増悪しており,直腸癌の骨転移が疑われた.疼痛コントロールおよび確定診断目的のため,左第四指切断術を施行した.病理所見で腺癌の診断となり,直腸癌の転移と考えられた.Performance status(PS)4と活動性低下がみられ,直腸癌術後70日目に転院となった.骨折の診断から10か月が経過し,生存している.患指の切断により疼痛から解放され,患者のQOLが改善する可能性が示唆された.

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