2024 年 57 巻 12 号 p. 585-595
目的:クローン病は腸管の慢性炎症を背景としてまれに癌化することが知られているが,本邦ではクローン病に合併する癌は痔瘻癌を含む直腸肛門部領域に多く,小腸癌の報告は少ない.今回,当院で経験したクローン病合併小腸癌症例と本邦報告例を合わせて検討したので報告する.方法:2011年1月から2022年12月までに当院で手術を施行したクローン病合併小腸癌17例と,本邦報告例26例を合わせた計43例(52病変)の臨床病理学的特徴,診断,治療について検討した.結果:男性31例,女性12例,小腸癌診断時の年齢は49歳,クローン病の病脳期間は18.0年であった.病型は小腸型13例,小腸大腸型26例,不明4例,手術適応は狭窄27例,瘻孔11例,癌6例,穿孔3例であった.術前に小腸癌と診断された症例は6例,術中に診断された症例は4例で,33例は術後の病理検査で診断された.小腸癌発生部位は空腸1病変,回腸51病変であった.病変の肉眼型は5型が11病変と最も多く,次いで0型と3型が各5病変,1型,2型,4型は各1病変,不明が28病変であった.組織型は高分化腺癌26病変(50.0%),中分化腺癌14病変(26.9%),低分化腺癌6病変(11.5%),印環細胞癌4病変(7.7%),粘液癌2病変(3.8%)であった.壁深達度はpTis+T1:10例,pT2:9例,pT3:14例,pT4:15例で,リンパ節転移は20例中3例,遠隔転移は38例中5例に認めた.5年生存率は63.8%であった.結語:クローン病に合併した小腸癌は術前に診断することが困難で,狭窄や瘻孔など通常のクローン病変として手術されていた.