2024年が始まりあっという間に1か月が過ぎました.元旦には能登半島で大きな地震があり,多くの方々が被災されました.亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに,今もまだ日常とは程遠い現地で診療にあたっておられる先生方に敬意を表したいと思います.今回の地震では阪神淡路大震災や東日本大震災の時の教訓が情報の伝達や避難の面で活かされたようです.過去の事例に学んでもしもの時に備えることの大切さは,日々の診療にも通じる点があると思います.また,1月2日には日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突する事故があり,海上保安庁の機体に乗っていた5名の方が亡くなられています.こちらは管制官からの指示が意図通り伝わっていなかった可能性が原因として考えられており,確実なコミュニケーションの重要性が再認識されました.どちらの事案も年初にチームとして安全な診療を心がけようと気持ちを引き締めるきっかけとなりました.
さて,第57巻2号には原著1編,症例報告5編の計6編の論文が掲載されています.いずれも興味深い論文ばかりですが,なかでも私の一押しは秦野赤十字病院外科 小野由香利先生らの「腹腔鏡下に切除した胃結腸間膜由来神経内分泌腫瘍の1例」です.神経内分泌腫瘍の原発部位としてはめずらしい胃結腸間膜から発生した腫瘍を腹腔鏡下に摘出したという報告で,わかりやすいシェーマと詳細な文献検索に基づく考察が印象的でした.大学病院からの投稿が多い中,一般病院からも優れた報告がなされていることに刺激を受けました.
まだまだ寒い日が続きますが,少しずつ日の出も早くなり春が近づいてきているのを感じます.今年も本誌が先生方の日常臨床や研究のお役に立てるように努めていきたいと思っております.
「査読への想い:如何に教育的な査読によりいい論文を作り出すか?」
論文の査読は結構面倒なもので,投稿された論文を読んで興味深いかだけでなく,投稿された先生方の記述が客観的な事実に基づいているか,引用している文献が十分かなど自分でもその領域について調べたうえで学術的な価値や信頼性を評価する必要があります.また,書かれている内容は興味深いものであっても,科学論文としてのスタイルが不十分である場合も少なくありません.
私は編集委員として査読を通して投稿された先生方の論文をより価値の高いものにすること,読者の先生方の役に立つものにすることを心がけています.投稿される先生方の論文がより良いものになる可能性があるかぎりとことんお付き合いさせていただきますので,ぜひ本誌に論文を投稿していただきたいと思います.
(水島 恒和)
2024年2月6日
