日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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57 巻, 2 号
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原著
  • 愛甲 丞, 隈丸 拓, 山下 裕玄, 金治 新悟, 絹川 直子, 掛地 吉弘, 北川 雄光, 瀬戸 泰之
    原稿種別: 原著
    2024 年 57 巻 2 号 p. 51-59
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/29
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    目的:術後早期回復プログラムの普及にともない,周術期管理に関する診療報酬算定が可能となったが,算定による合併症抑制効果を臨床データと紐づけて解析した大規模な報告は少ない.今回,上部消化管手術を対象とした.周術期管理に関連する診療報酬加算の算定状況をアンケート調査し,National Clinical Database(以下,NCDと略記)と紐付けたうえで合併症抑制効果を解析することを目的とした.方法:日本消化器外科学会認定施設のうち上部消化管手術を実施している診療科を対象にアンケートを行い,周術期管理に関連する診療報酬8項目の算定の有無を調査した.NCDの術後アウトカム(術後合併症発症率,術後30日以内の死亡率,術後在院日数)と紐づけし統計学的解析を行った.結果:認定施設884施設のうち633施設(71.6%)から回答を得た.栄養サポートチーム加算+歯科医師連携加算は算定ありが,幽門側胃切除術および胃全摘術で有意に短い術後在院日数を示し,食道切除再建術では術後30日以内の死亡率が有意に低かった.周術期口腔機能管理後手術加算は算定ありが,いずれの術式でも術後在院日数が有意に短く,食道切除再建術では術後30日以内の死亡率が有意に低かった.結語:胃癌手術,食道癌手術において,診療報酬の算定状況と術後合併症の相関が明らかとなった.

症例報告
  • 加藤 真司, 小林 聡, 高木 健裕, 駒屋 憲一, 前田 孝, 三品 拓也, 日比野 佑弥, 白木 之浩
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 2 号 p. 60-66
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    症例は67歳の男性で,20年前より食物の通過障害,嘔吐を認め,17年前に当院消化器内科を受診した.胸部上部,中部,下部食道に3か所の狭窄を認め,食道炎の瘢痕狭窄と診断し,その原因として食道アカラシアが先行していた可能性が考えられた.内視鏡的拡張術による保存的治療を繰り返し行っていたが,症状の改善が乏しくなったため,胸腔鏡下食道亜全摘術を施行した.病理所見では,食道壁全体にAuerbach神経叢への炎症細胞の浸潤と神経節細胞の減少,消失を認めた.3か所の狭窄部位は神経細胞の消失に加え膠原線維の増生を認め,悪性所見は認めなかった.食道全体に潰瘍瘢痕を多数認めることから,食道アカラシアが先に存在し,口側は食道炎により瘢痕狭窄を来したと考えられた.食道アカラシアに伴う多発狭窄はこれまでに報告がなく,非常にまれな病態と考えられたため報告する.

  • 安達 祐里, 押切 太郎, 後藤 裕信, 加藤 喬, 堀川 学, 長谷川 寛, 金治 新悟, 山下 公大, 松田 武, 谷 明穂, 児玉 良 ...
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 2 号 p. 67-74
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    症例は65歳の男性で,他院のスクリーニング検査で多発食道癌を指摘され,そのうちの1病変は食道憩室内に認めた.CTでは甲状腺左葉背側に囊胞性腫瘤様の憩室を認め,頸部食道左側に突出していることからKillian-Jamieson憩室(以下,K-J憩室と略記)と診断し,多発食道癌に対し胸腔鏡下食道亜全摘術(二領域郭清),胸骨後経路再建術を施行した.咽頭食道憩室としてはZenker憩室が一般的であるが,本疾患の存在および解剖学的見地に基づくZenker憩室との違いを認識しておく必要がある.また,食道憩室内に発生する癌はまれであり,これまでK-J憩室内に発生した食道癌の報告はない.筋層の有無など憩室の特性によって内視鏡的治療の適応も通常と異なる場合があり,病態を慎重に考慮して治療法を選択する必要がある.

  • 足立 雄城, 西別府 敬士, 窪田 健, 大橋 拓馬, 小西 博貴, 塩崎 敦, 藤原 斉, 大辻 英吾
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/29
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    症例は81歳の男性で,誤嚥性肺炎による発熱・呼吸苦で救急搬入された.抗生剤治療により軽快するも嚥下機能低下を認めたため,胃瘻造設術を施行した.胃瘻造設後26日目に発熱,炎症反応上昇,胃瘻からの血性排液があり,腹部造影CTでは胃壁肥厚,胃粘膜の造影不良,胃壁内ガス,肝内門脈ガスを認めた.上部消化管内視鏡検査では,びまん性に粘膜の暗赤色,浮腫状変化を認め,胃蜂窩織炎と診断した.審査腹腔鏡で胃壊死を認めれば救命のための胃全摘出も検討したが,手術リスクは高かかったため保存的加療を選択した.胃瘻造設後に門脈ガスを伴う胃蜂窩織炎を認めたが,保存的加療にて軽快した1例を経験したので報告する.

  • 古川 舜理, 井手 貴雄, 與田 幸恵, 能城 浩和
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 2 号 p. 82-91
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/29
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    症例は58歳の女性で,胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術,小腸動静脈奇形に対し腹腔鏡補助下小腸部分切除術施行後であった.経過観察中の胸腹部造影CTで膵尾部に辺縁が濃染される径19 mmの低吸収腫瘤を認めた.造影MRIでも同部位に腫瘤を認め,辺縁が漸増性に増強され,隔壁様構造も疑われた.膵神経内分泌腫瘍疑いの術前診断で,腹腔鏡下脾臓温存膵体尾部切除術を施行した.術後経過は良好だった.病理組織学的検査では,腫瘤に一致した脾臓組織および内部に重層扁平上皮様の上皮に被覆された囊胞を認め,膵内副脾に発生した上皮囊胞と診断された.膵内副脾に発生した上皮囊胞は比較的まれな疾患であり,診断に苦慮することが多い.一方で,幽門側胃切除後に膵体尾部切除を施行する際は残胃の血流に注意する必要がある.今回,幽門側胃切除後の膵内副脾に発生した上皮囊胞に対し,腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した症例を経験したため報告する.

  • 小野 由香利, 片山 雄介, 松下 直彦, 澤﨑 翔, 利野 靖, 大佛 智彦
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 2 号 p. 92-99
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/29
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    症例は71歳の女性で,肝機能障害の精査のため腹部超音波検査を施行したところ,膵頭部腹側に30 mm大の腫瘤を認め,増大傾向であった.造影CTで,腫瘍は副右結腸静脈へ浸潤が疑われ,横行結腸の辺縁動脈に接していた.また,他臓器と連続性がない多血性腫瘍であり,腸間膜由来の神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;以下,NETと略記)または消化管間質腫瘍を疑い,根治切除の方針とした.術中,網囊を開放し観察したところ,腫瘍は隔壁を伴い,横行結腸間膜との連続性は認めなかった.腹腔鏡下に腫瘍摘出を行い,腫瘍血管は右胃大網動静脈より分岐することを確認できたため,胃結腸間膜由来の腫瘍と診断した.病理組織診断ではchromogranin A,synaptophysin,CD56陽性,Ki67陽性率は1%であり,NET G1に相当する所見であった.腸間膜由来,なかでも胃結腸間膜由来のNETは極めてまれである.また,腹腔鏡下術の拡大視効果によって,腫瘍と周囲組織との連続性の有無を詳細に観察することができ,低侵襲な治療を施行できたため,報告する.

編集後記
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