2024 年 57 巻 7 号 p. 358-366
日本消化器外科学会ワーク・イン・ライフ委員会では,2023年に本学会会員に対して行った,「医師の働き方改革を目前にした消化器外科医の現状」に関するアンケート調査の結果を報告した.その中で,消化器外科医は現在の労働環境や待遇が悪いと感じており,進路として消化器外科医の道を後進に勧めることができないと考えていることが明らかになった.そして,地方における消化器外科の診療体制維持のためには,労働環境や待遇の改善が急務であるとの結論を得た.また,今回われわれは,厚生労働省のデータを振り返り,過去20年間の消化器・一般外科医師数が約20%も減少していることを示した.さらに,本学会会員数が過去20年間で10%減少しており,この傾向が続いた場合,10年後には65歳以下の会員数が約25%減,20年後には50%減になると予測された.近い将来,わが国において,消化器外科疾患の診療に支障を来すことは確実であり,その対策として医療者のみならず,広く国民に向けて現在が危機的な状況であることを共有し,消化器外科医に対するインセンティブも含めた待遇改善について理解と後押しをいただくべく,本学会公式ウェブページ内に本記事を掲載した.
※インセンティブ:インセンティブとは,英語の「incentive(刺激・動機・誘因)」に由来し,ここではモチベーションを維持・増幅させるための外的刺激(評価制度)のことを意味する.