抄録
われわれの原発性肝細胞癌の切除症例162例中で, 門脈の1次または2次分枝内に腫瘍塞栓を持った症例は11例である.この11例の内, 術前の合併療法として肝動脈塞栓術が4例に施行されている.そこで今回塞栓術を行った例と非施行例の予後について検討した,
塞栓術を術前に行わなかった群7例のうちには1例の長期生存例があるが, 残る6例はすべて癌再発にて平均8ヵ月にて死亡している.これに対し術前塞栓術を行った群では最長3年8ヵ月の1例をはじめ, 2年8ヵ月の2例, 1年7ヵ月の1例がありすべて生存中である.しかも現在のところ何ら再発の徴候は見られておらず, 術前肝動脈塞栓術併用の有用性が推測される.