抄録
手術および麻酔侵襲の, 胆汁酸動態に及ぼす影響をみるため, 消化器疾患48例の, 手術前後の血清胆汁酸を測定した. 食道静脈瘤離断術では, 術直後に胆汁酸分画は変化せずに血清総胆汁酸 (以下, 総胆汁酸) が平均21.7nmol/ml低下し, 術後3~5日目にコール酸の上昇, グリシン抱合の増加とともに総胆汁酸は再上昇した. 肝硬変併存肝癌切除例では, 総胆汁酸は高値のまま推移し, グリシン抱合が有意に高かった. 消化管切除, 胆嚢摘出例では総胆汁酸の変動はなかった. 肝硬変では, 麻酔導入により紹胆汁酸が平均21.1nmol/ml上昇するが, 胆汁酸分画の変化はなかった. 肝硬変では血清胆汁酸の量的, 質的変動が, 他の病態より大きいことが明かとなった.