抄録
食道癌58症例を70歳以上 (24例), 60~69歳 (22例), 59歳以下 (12例) の3群に分け, 術前の全身臓器障害, 生体防御障害および術後合併症について計量的に評価したところ, それらはいずれも70歳以上の高齢者群で最も高度であった. そこで, 術前機能障害と術後合併症の相関係数を求めると, 臓器障害は臓器固有の術後合併症と相関しないのに対し, 生体防御障害は術後合併症と有意に相関し, これは特に高齢者でより明瞭であった. また, 高齢者の術後合併症死の予測は, 生体防御機能によって87.5%になしえたが, 臓器機能では50%にしかなしえなかった. 以上より, 食道癌手術の適応判断, 特に高齢者のそれには, 術前の生体防御障害への配慮が必要と考えられた.