抄録
進行直腸癌に対する術前照射療法の治療効果を高めるため, 抗癌剤の腫瘍内局注併用法を施行した.その治療効果を比較するため, 非照射25例, 照射単独15例, 局注併用21例の切除標本を用い癌巣の分布を比較した.照射前の注腸X線像をもとに壁深達度の改善が著しいと判定された症例は, 照射単独例4例 (26.7%), 局注併用例11例 (52.4%) であった.それぞれの組織構築図を作製し検討した結果では, 局注併用例は照射単例に比べ, 壁外浸潤 (a1以上) とew2mm以下の鯛がより狭くなっている傾向が示唆された.さらに局注併用例のうち著しい照射効果のみられた症例では, 癌胞巣の退行性変化 (のう胞状病変など) が広く認められた.