1988 年 21 巻 11 号 p. 2584-2590
大腸多発癌は自験大腸癌切除例663例のうち32例 (4.8%) であり, 同時性多発癌23例, 異時性多発癌9例であった.多発癌では, 単発癌とくらべ家族内に大腸癌を有する率, ポリープの併存率が有意に高かった.同時性多発癌は進行癌と早期癌の組合せが多く, 占居部位では単発癌と差がなかった.異時性多発癌は進行癌同士の組合せが多く, 右側結腸に占める頻度が有意に高率であった.治癒切除例の累積5年生存率は, 多発癌では89.7%, 同時性多発癌では92.3%と, いずれも単発癌の76.1%とくらべ有意に良好であった.大腸癌の診断, 治療に際しては常に大腸多発癌の発現に留意した精査が望まれる.