抄録
病態肝に対する肝切除後の合併症中肝切離端膿瘍の対策は重要である. 当教室の肝切除症例86例中57例 (肝硬変併存33例58%) について切離断端の性状, ドレーン留置期間, 排液の細菌叢などを検討した. 切離端はドレーン留置にもかかわらず被包形成の傾向にあり, 完全被包型 (22例38.6%), 不完全被包型 (15例26.3%), 被包非形成型 (20例35.1%) の3型に分類された.肝硬変併存例でMTC使用例に被包形成 (94%), 発熱症例が多かった.ドレーン留置期間は肝硬変の有無よりも, MTC使用 (42.8±23.8日) と非使用 (23.0±20.4日), の症例間に有意差 (p<0.01) が認められた. MTC使用例ではドレーンよりの排液量が多く, 感染を起こしやすかった. 術後膿瘍を形成した場合は速やかにドレナージすることによって肝不全への移行を阻止できるものと思われた.