日本消化器外科学会雑誌
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直腸粘膜下層癌の臨床病理学的検討
固有筋層まで浸潤した癌と比較して
松本 好市石島 直人菅谷 義範寺島 秀樹山村 剛司松本 収生北川 達士山本 純二
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1989 年 22 巻 5 号 p. 1127-1132

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抄録

治療法の選択にいまだ問題が残る癌の浸潤が粘膜下層にとどまる直腸癌 (以下sm癌) について, 教室で経験した17例と固有筋層に癌の浸潤が及んでいる33例の直腸癌 (以下pm癌) を臨床病理学的に比較検討した. 両者の臨床的鑑別は比較的容易に行えた. 治療はsm癌の4例24%を除き根治的腸切除術が行われ, リンパ節転移はsm癌12%, pm癌15.1%とほぼ同様であった. 転帰はpm癌の1例を除き全例生存中である. リンパ節転移の頻度および予後の面から両者は粘膜内癌および固有筋層より深く癌の浸潤がおよぶ進行癌とは明らかに区別されるべきと考えられ準早期癌と呼称されるべきであろう. しかし治療法の選択に最も重要な指標であるリンパ節転移の確実な術前診断は, 現在の臨床病理学的諸因子の検討では不可能であり, 今後なんらかの新しい診断法の開発が望まれる

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