日本消化器外科学会雑誌
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肝のInflammatory pseudotumorの1切除例
今里 雅之林 恒男田中 精一上田 哲哉竹田 秀一山本 清孝武藤 康悦磯部 義憲上野 恵子山本 雅一小林 誠一郎羽生 富士夫
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1990 年 23 巻 1 号 p. 80-84

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抄録

症例は50歳男性で, 主訴は心窩部痛である. 胃潰瘍の診断とともに, 超音波検査で肝右葉に蜂巣状内部構造を有する比較的境界鮮明な直径7cmの腫瘤を認めた. Computed tomography (CT) では腫瘤は低吸収域で造影後には菊花状で各花弁にあたる部位の辺縁が濃染される特異な像を呈した. 腹部血管造影では, 腫瘍血管や圧排所見はないが毛細管相で腫瘍濃染像を認めた. 腫瘍マーカーは正常であった. 腫瘍の穿刺吸収細胞診では, 白色の濃汁の中に線維性組織が吸引されたが炎症性変化のみで悪性所見は認めないため厳重な経過観察とした. 2年後, 画像的に腫瘤の増大が認められ, 悪性腫瘍が否定できないために拡大肝右葉切除術を施行した. 病理学的にindammatory pseudotumorと診断された. 肝原発の本疾患は文献上17例の報告しかなく, 経過を追い増大を認めた症例はいまだ報告されていない. ここに文献的考察を加え報告する.

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