肝原発yolk sac tumorはまれな疾患で現在までの報告は3例のみだが, 27歳女性の1例を経験した. 主訴は右側腹部痛, 右肩方散痛で腹部ultrasonography (以下US) にて肝膿瘍を指摘された. 生化学検査ではα-fetoprotein (以下AFP) とlactate dehydrogenase (以下LDH) が非常に高値を示した. 吸引細胞診で肝細胞癌が強く疑われ, 肝右葉切除を施行した.術後病理組織検査で肝原発yolksac tumorと診断された. 術後4か月目に咳嗽と腹部腫瘤を訴え, computed tomographyで右胸水と大網転移が認められ, AFPの再上昇も認めた. Cisplatin, Vinblastin, Bleomycinによる化学療法 (PVB) で胸水の消失, 転移の著明な縮小, AFPとI型優位のLDHの低下をみた. しかしその7か月後, AFPとLDHの急増, 転移の増大, 腹水が発現し, 術後1年4か月目で肝不全にて死亡した. 本症の診断にはUSと血管過影が有用で, AFPとI型優位のLDHは病状をよく反映した. 治療はPVBによる化学療法が有効であった.