1990 年 23 巻 12 号 p. 2777-2782
直腸癌の術後排尿・性機能障害とストーマ障害についてアンケート調査を行い, 回答を得られた73例の成績を分析した.排尿困難と残尿感は肛門括約筋温存術式より直腸切断術後に多く発生し, 腸骨動脈領域郭清例での発生率はそれぞれ38%, 34%であり, 非郭清例の8%, 8%に比べ高頻度にみられたが, 自律神経温存手術では認められなかった.また, 男性に比べ女性で排尿障害の出現率が低い傾向が認められた.性機能障害は前方切除術よりも直腸切断術および貫通・重積術式で多く認められた.男性の人工肛門造設例での性生活障害の出現率は87%であり, 非造設例の44%に比べ多く, また女性の症例でも同様の結果が得られ, 心因性の障害の関与が推測された.年齢層別では高齢者ほど性機能障害の出現が高頻度に認められた.ストーマ障害では, 位置異常の訴えは3%と少なく, 周囲皮膚障害は24%と比較的高率に認められた.