日本消化器外科学会雑誌
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S状結腸切除術を必要としたmyxedema megacolonの1例
足立 信也渡辺 宗章長田 明尾崎 梓岩崎 洋治
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1990 年 23 巻 4 号 p. 934-937

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抄録
S状結腸軸捻転で緊急手術を受けた62歳の男性が手術後, 四肢に著明な浮腫を認め, 長期間, 腹部膨満感を自覚していたことがわかった. 検査の結果, 自己免疫性の甲状腺機能低下症を基礎疾患にもつことがわかり, 粘液水腫性巨大結腸症 (myxedema megacolon) であると診断した. 軸捻転解除後約3か月間. 甲状腺ホルモン剤を漸増して投与し, 血液中T3, T4は正常値になったが巨大結腸症による麻痺性イレウス状態はむしろ増悪した. このため, S状結腸の拡張は不可逆性のものであると判断し, S状結腸を切除した. 切除腸管にはmyxedema megacolonに特徴的な酸性ムコ多糖類の蓄績がみられた. この蓄績は腸管内輪筋下層に著明であり, 内輪筋の収縮力低下が病因であるとおもわれた. myxedema megacolonは外科的切除の適応はない疾患とされているが本疾例ではS状結腸切除術を施行し, 良好な経過が得られたので報告した.
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