抄録
1969年10月より1990年10月までに経験した膵頭領域癌 (十二指腸癌, 原発不明癌を除く) 切除例114例の予後および予後に関与する因子について検討した.症例の内訳は膵頭部癌55例, 乳頭部癌34例, 下部胆管癌25例であり, 平均年齢はそれぞれ64.0±11.7歳, 59.3±12.3歳, 62.1±11.5歳であった.
このうち膵頭部癌の予後が最も悪く (p<0.01), 1年生存率は40%, 5年生存率は8%であった.乳頭部癌の予後は膵頭部癌に比べ比較的良好で1年生存率64%, 5年生存率31%であった.しかし進行したstage III以上の症例では予後不良で膵頭部癌とほとんど変わらない生存曲線を示した.下部胆管癌は最も予後良好であり, 1年生存率72%, 5年生存率44%であった.膵頭部癌では予後に最も関与したstage決定因子は膵後組織への浸潤 (Rp因子) であり, 術式では膵頭十二指腸切除術が膵全摘術より予後良好であった (p<0.05).乳頭部癌では膵臓浸潤 (Panc), 十二指腸浸潤 (D), リンパ節転移 (N) の各因子とも予後に関与したが, Panc因子が最も重要であった (p<0.001).下部胆管癌では各stage決定因子の有無で予後に有意差を認めなかったが, 組織学的リンパ節転移 (n) 1, 組織学的膵臓浸潤 (panc) 1, 組織学的十二指腸浸潤 (d) 1, 組織学的胆嚢浸潤 (ginf) 1にとどまっていれば比較的良好な予後が期待された.