日本消化器外科学会雑誌
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小腸全域から盲腸にかけて多発性狭窄をきたした腸結核の1例
平林 邦昭松村 千之升木 行雄中林 洋
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1992 年 25 巻 10 号 p. 2550-2553

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抄録

症例は50歳の男性.発熱を主訴に来院し, 胸部X線上肺結核を疑われ, 抗結核剤投与後3週間目にイレウスに陥った.注腸造影検査では盲腸にAppleCore像, 内視鏡検査では盲腸の狭窄と炎症性ポリープ, 輪状潰瘍を認め, 生検ではクローン病と診断された.手術所見では, 回盲部に腫瘤触知, 小腸全域に40数箇所にも及ぶ狭窄を認め, かつ3×3cm大の回腸潰瘍が直腸壁に穿通し癒着していた.切除標本では回盲部に帯状潰瘍, 小腸には多数の卵円形潰瘍を腸間膜付着部対側上に認めた.病理学的には非乾酪性肉芽腫が多発しており診断に難渋したが, ごく一部の肉芽腫にLanghans巨細胞を全周に伴う乾酪性肉芽腫を認め, また潰瘍部において粘膜下層の肥厚所見に乏しく, 腸結核と診断した.臨床的にも, 病理学的にも, クローン病との鑑別上, 興味ある病像を呈したまれな腸結核症例と考えられ, 文献的考察を加え報告する.

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