抄録
急性胃粘膜病変の年代的推移を考察し, 発症の予防, 治療法を検討する目的で臨床的に統計評価した. 1979年8月から1991年12月までに横浜市立大学医学部第2外科, 同救命救急部において経験した急性胃粘膜病変72症例について年代別に前半6年と後半6年の2群に分け, その背景疾患, 治療, 予後について検討した. 前半の症例数は周術期38例, 非周術期18例の計56例であり, 後半の症例数は周術期7例, 非周術期9例の計16例と減少した. また, 死亡率は前半の43.1%から後半の14.3%と著しく減少した. 両期間において肝疾患, 呼吸器疾患, 脳血管障害などの合併症を有する症例において急性胃粘膜病変の発症が多く認められた. 周術期管理の向上に加え, H2-receptor antagonistを初めとする薬剤の普及に伴い急性胃粘膜病変の発生率が減少し, 手術症例, 死亡症例も減少した. 急性胃粘膜病変の発症予防, 治療にはH2-receptor antagonist, 防御因子増強剤の投与が有用と考えられた.