症例は72歳の男性.タール便を主訴に入院.上部消化管内視鏡検査を行ったところ, 十二指腸下行脚のVater乳頭の対側の前壁よりに, 辺縁が不整な陥凹性病変を認めた.同部位の生検で腺癌を認めたため, 膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では, 病変は1.6×1.0cm大の辺縁不整な, 浅い陥凹性で, Vater乳頭との連続性は認められなかった.病理組織学的には, 深達度smの中分化型腺癌で脈管侵襲およびリンパ節転移はみられなかった.陥凹型早期十二指腸癌の報告はまれで, 本邦報告例としては自験例は14例目にあたるものと思われる.