1993 年 26 巻 2 号 p. 203-213
重症慢性便秘患者20例の切除結腸を用いて, 壁内神経細胞の計測と平滑筋の収縮能を検討した.画像解折装置を用いて計測した結腸1周当たりの神経細胞数は, 便秘群では154±32個と, 排便障害のない早期大腸癌患者10例の対照群の274±67個に比べ有意の減少, 核面積は便秘群では102.8±30.6μ2と, 対照群62.0±19.6μ2に比べ有意の増加 (大型化) を示した.新鮮結腸筋組織のmuscarinic acetylcholinereceptorの [3H] QNBに対する特異的結合量は, 便秘群では447.0±79.6fmole/mg proteinと対照群の291.6±31.2f mole/mg proteinに比べ有意の増加を示した.さらに, muscarinic agonistであるoxotremorineに対する結腸筋条片の用量反応曲線において, 便秘群は対照群より著明な左方移動を示し, Cannonのdenervation supersensitivityの存在を示唆した.以上より重症便秘腸管の平滑筋は収縮能を保持しているが, コリン作動性の興奮性ニューロンの減少およびそれによる相対的抑制ニューロンの優位が慢性便秘の病態に深く関与していると推論された.