日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
選択的動脈内セクレチン注入法により局在診断しえた十二指腸ガストリノーマの根治的切除例
上田 幹子今村 正之嶋田 裕服部 泰章高橋 清之柴田 信博野口 貞夫
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 26 巻 4 号 p. 1067-1071

詳細
抄録

悪性十二指腸粘膜下ガストリノーマの根治的切除をした1症例を報告した.37歳の男性.1981年より再発潰瘍に対し計3回の胃切除とさらにイレウスに対する開腹術を受けていた.1989年3月の血清ガストリン値 (IRG) は602pg/dlと高く, 精査目的で当院に紹介された.セクレチンテスト陽性にてZollinger-Ellison症候群と診断されており, 当院で選択的動脈内セクレチン注入法を用いて局在診断したところ, 胃十二指腸動脈および上腸間膜動脈内へのセクレチン30単位急速注入40秒後に肝静脈血IRGはそれぞれ370pg/mlと150pg/ml上昇し, 脾動脈では有意な上昇を認めなかった.したがって膵頭十二指腸領域にガストリノーマが局在すると診断した.開腹したところ膵頭部に腫瘍を認めず, 十二指腸切開にて下行脚内に8×9mmの粘膜下腫瘍を認めたので摘出した.膵頭十二指腸領域のリンパ節郭清後の術中迅速ガストリンアッセイ法を用いたセクレチン試験は陰性で, 治癒切除と判定しえた.2年10か月後の現在, 無再発生存中である.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top