抄録
肝切除後の胆汁性腹膜炎による肝再生障害について, ラットを用い実験的に検討した.70%肝切除術に総胆管切開による胆汁性腹膜炎を付加すると, 残存肝のDNA合成の発現は有意に遅延し低下したが, 活性酸素スカベンジャーの反復投与は, 胆汁性腹膜炎による肝再生障害を有意に改善した.残存肝の脂質過酸化は肝切除のみでは亢進せず, 胆汁性腹膜炎で術後早期より有意の亢進がみられたが, スカベンジャーの投与により約1/2に抑制された.残存肝エネルギーチャージの低下は胆汁性腹膜炎でより大きく, 回復も遅れる傾向にあった.胆汁性腹膜炎では血中エンドトキシンの上昇がみられ, これが活性酸素の生成を促し残存肝における脂質過酸化反応亢進の一部を担っているが, 胆汁成分の直接的なミトコンドリア膜障害によるエネルギー代謝障害が肝再生障害を引き起こすものと考えられた.