日本消化器外科学会雑誌
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胃癌・大腸癌の組織発生から見た治療
大原 毅
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1994 年 27 巻 9 号 p. 2063-2072

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抄録

胃癌の組織発生母地として胃潰瘍・腸上皮化生・再生上皮を実験的・臨床的に検討した.この3者の関係は, 胃粘膜の再生が起こると, いったん幼若な腸上皮 (preintestinalization) となるが, このpreintestinahzationが発癌と深く関係することであった.臨床面では分化度・深達度別の治療としては, 早期胃癌には縮小手術, 進行癌には術中に分化度に応じた化学療法が有効であった.
大腸癌の組織発生・進展からみると, 腺腫を経由する癌はポリープ状に隆起し, 腺腫成分は認められず深部進展は遅いが, denovo癌では平坦型が多く腺腫成分はなく深部進展はきわめて早かった.このことは治療上極めて重要で, de novo癌は小さいうちから非常に早く深部進展するので大多数の進行癌のルーツであること, 組織学的にはde novo癌, 肉眼的には平坦型の大腸癌をさがすことが非常に大切であること, さらにポリープだけを切除していたのでは大腸癌の予防は出来ないことが指摘できる.

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