日本消化器外科学会雑誌
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十二指腸球部進行癌の1例
斎藤 智裕中村 潔小西 義男沢田石 勝藤巻 雅夫
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1994 年 27 巻 9 号 p. 2161-2165

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抄録

十二指腸球部原発進行癌の1例を経験した.患者は69歳の女性.心窩部痛, 食欲不振を主訴に来院.上部消化管造影, 上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部に潰瘍を伴う腫瘤性病変を認めた.生検にて原発性十二指腸球部癌と診断し, リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術, 十二指腸球部切除術を施行しBillroth-II法にて再建を行った.切除標本で腫瘍は幽門直下の十二指腸球部前壁に位置し, 2.8×2.5cm大でBorrmann2型様の外観を呈し, 組織学的には漿膜浸潤を伴う中分化型管状腺癌であった.自験例を含む十二指腸球部進行癌の本邦報告40例の検討では, 男女比2: 3で60歳以上の高齢者に多く, 潰瘍形成型の肉眼形態を示すものが約7割を占めた.また8割以上が乳頭腺癌, 管状腺癌など, 比較的分化度の高い組織型を呈したが, 本症診断時すでに約2/3の症例で漿膜浸潤をきたしており, さらに約1/3の症例で他臓器浸潤が認められ, 本症の深部浸潤傾向の強さがうかがわれた.

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