日本消化器外科学会雑誌
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肝動脈・門脈・下大静脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除により比較的長期生存の得られている胆管粘液癌の1例
中川 浩一八木 孝仁貞森 裕笹井 信也大江 新野橋本 雅明大月 均
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1996 年 29 巻 11 号 p. 2155-2159

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抄録

症例は72歳の男性.胃癌術後の閉塞性黄疸に対し前医にて下部胆管にStrecker-stent挿入されるも再度黄疸出現し, 肝外側区域切除・肝内胆管-空腸吻合術を施行されていた.その後発熱, 背部痛, 全身倦怠感出現するため当院来院.ERCでは下部胆管に腫瘍を認め, 腫瘍末梢側胆管の嚢胞状拡張を認めた.10か月間経過観察したが腹部CT像では, 腫瘍の増大は緩徐であった.血管造影にて主要血管への浸潤が認められた.胃癌の再発ではなく胆管原発との診断にて, 肝動脈・門脈・下大静脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術を行った.組織学的に胆管癌が膵および十二指腸に浸潤しており, 組織型は粘液癌であった.術後10か月目に肝転移が生じたが, PEITにより肝転移巣の消失を認め, 術後2年の現在も健在である.胆管粘液癌はまれであるが, 進行癌であっても合理的拡大手術を追求することにより良好な予後が得られるタイプであることが示唆された.

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