日本消化器外科学会雑誌
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頸部上縦隔リンパ節再発をきたした食道粘膜癌の1例
石後岡 正弘池上 淳高橋 康幸
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1996 年 29 巻 8 号 p. 1768-1771

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抄録

食道m3癌は脈管侵襲やリンパ節転移を有する症例もあり, その治療法は局所切除が適応となるのか, あるいはどの程度まで郭清が必要かいまだ確立していない. 我々はm3癌手術の4年後に頸部上縦隔リンパ節再発をきたした症例を経験したので報告する.
症例は53歳の男性. 1988年Im, O-IIc, mに対して右開胸開腹胸部食道全摘RII施行. 病理所見はMod, O-IIc, 0.7×0.6cm, m3, lyO, v0, n (-) であった. 術後補助療法は施行せず, 外来にて経過観察していたが, 4年後に嗄声が出現し精査の結果, 前回の食道癌の右反回神経周囲リンパ節再発と診断し化学放射線併用療法を施行したが, 6か月後に多発肝・肺転移にて死亡した. 粘膜癌は予後良好であるが, 本症例のようにその進行度から妥当な手術を施行したにもかかわらず, 再発を認める症例も存在する. 従って, どのような症例が再発, 転移しやすいのかその予知と対策も今後の重要な問題と思われた.

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