日本消化器外科学会雑誌
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TAEが効果を示し2期的に切除しえた直腸癌同時性多発性肝転移の1例
角谷 直孝泉 良平広澤 久史山本 精一福島 亘上田 順彦小西 一朗広野 禎介
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1997 年 30 巻 12 号 p. 2322-2326

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抄録
直腸癌同時性多発性肝転移に対し原発巣切除後, transcatheter arterial embolizationを行いPartialresponseの効果をえ, 2期的に肝切除が可能となった1例を経験したので報告する.症例は59歳の女性.Rabの直腸癌で低位前方切除術を施行後, 肝両葉の多発性肝転移に対しTAEを行ったところ画像上PRの効果をえ, CEAも61.6ng/mlから2.5ng/mlと正常化した.抗癌剤としてはファルモルビシン, CDDP, MMCを使用した.初回TAE時の検索では肝転移巣は血管造影上hypervascularではなかったが肝動脈造影下CTでは腫瘍内部の血流が観察された.3~7か月おきに3回のTAEを追加して転移巣の治療を行ったが, 原発巣切除1年7か月後の検索では新たな転移巣の出現がないが, 転移巣周囲の癌の再燃が疑われたため, 計5個の肝転移巣を切除した.病理組織検査では4個の肝転移巣の周囲に散在性の癌の遺残が認められた.初回手術後3年3か月経過の現在, 再燃の徴候を認めない.
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