日本消化器外科学会雑誌
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回盲部を用いた膀胱形成術を行った直腸S状部癌の1例
高尾 安司二見 哲夫三宅 昌河郷 望大田 修平
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1997 年 30 巻 12 号 p. 2317-2321

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抄録
症例は47歳の男子. 1990年5月に直腸S状部癌膀胱浸潤の診断で低位前方切除術および膀胱亜全摘術に加えて, 回盲部を用いた膀胱再建術を施行した. 腫瘍は膀胱および回腸に固く癒着しており, 膀胱頸部で膀胱を合併切除して腫瘍をen blocに摘出した. 病理組織診断は高分化腺癌, se, n1, ly1, v0, ow (-), aw (-), ew (-) であった. 膀胱再建術は回盲部を用いて行われ, 盲腸と膀胱頸部の吻合および回腸と左右尿管を粘膜下トンネル法で吻合することによって自然排尿を可能にした. 術後6年を経過した現在, 再発の徴候はなく, 膀胱容量は260ml, 残尿0ml, 尿回数は1日4, 5回であり, 水腎症, 尿路感染症を認めていない. また, 夜間の尿失禁はあるが覚醒時には出現していない. 大腸癌手術にさいし膀胱全摘後に排尿 機能を温存した例はまれであるが, 患者のquality of lifeの立場からみてこの術式は有益であると考えられた.
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